2023/7/1   5:00 ⽇本経済新聞  電⼦版

マンション価格は今後どうなるのでしょう。名瀬加奈さんと⽇⽐学くんが堀⼤介・住宅問題エディターに聞きました。

「価格はどれほどの⾼⽔準なのですか」

不動産経済研究所(東京・新宿)によると⾸都圏の新築マンション価格は2021年、22年と2 年連続でバブル期(1990年)を上回る過去最⾼となりました。平均価格は22年が6288万円と90年を約3%上回っています。

価格⾼騰は⾸都圏以外の地域にも広がっています。東京カンテイ(同・品川)によると、1⼾1億円を超す「億ション」は22年時点で東京都、⼤阪府、愛知県の合計で2959⼾、それ以外の道府県でも452⼾あります。中古マンションの価格も22年の⾸都圏平均は4716万円をつ け、2年連続で前年⽐10%超の値上がりとなっています。

「それほどの好景気とも思えませんが」

マンションの供給⼾数も⼀緒に考えないと実像はつかめません。不動産経済研究所の調べでは、22年の全国新築供給は約7.3万⼾と90年⽐でほぼ半減しました。さらに⽴地の内訳をみると、東京23区など都⼼の割合が上昇しています。地⽅の億ションも⼤半は中核都市に限られています。全体の供給が減り、もともと⾼価格の都⼼の⽴地⽐率が⾼まれば当然、平均価格も上がることになります。

「価格上昇の要因は他にもありますか」

需要を下⽀えしているのは低⾦利です。変動型の住宅ローンでは現在、⾦利が年0.3%を下回るものまで出てきました。元利均等で35年返済のプランだと、億ションでも毎⽉返済額は約25万円ですみます。⼀⽅、バブル期は同7%の⾦利もあり、毎⽉負担は64万円弱でした。

「パワーカップル」と呼ばれる⾼所得の共働き世帯も有⼒な買い⼿となり、外国⼈投資家が⾼額物件へ⼿を伸ばすケースも多いようです。実需と投資の両⾯から⾼値を⽀える買い⼿がいるのです。

供給側の事情もあります。過去数年、建築の資材や⼈件費などの上昇が⽬⽴ちます。こうしたコストが価格に転嫁されている⾯もあります。

「購⼊や売却のポイントは何でしょう」

マンションは当⾯、⾦利の急上昇などの環境変化がないかぎり⼤きな値下がりは⾒込みにくいでしょう。買う側は無理なく返せる住宅ローンを計算するのが原則です。中古マンションは「今が売り時」と考える⼈もいるでしょう。ただし売却時は新しい住まいの確保が必須です。⾼く売れても、次に買う物件はもっと⾼いこともあり得ます。「次の住まいにいくらかかるか」も考えることが売却の基本になります。

「現在のマンション市況に課題はないのでしょうか」

既存の物件の⽼朽化が進んでいます。国⼟交通省は築40年以上のマンションが2041年末に約425万⼾まで膨らむとみています。⼯事費の上昇は⽼朽マンションの修繕にも反映されるため、管理コストの上昇が懸念されます。

既に修繕積⽴⾦の不⾜に悩むマンション所有者が増えています。新築マンションもいずれは古くなります。多額の住宅ローンを抱えながら、修繕の追加出費を求められる⼈が出てくる恐れがあります。

⼈⼝減が進む中、⾼額の新築物件の供給を続けることが妥当なのかも疑問です。⼾建ても含めて中古物件が流通しやすくなる⼯夫をし、リーズナブルな価格で住まいを選べる環境づくりが課題です。

ちょっとウンチク 「実質値上げ」にご⽤⼼

表⾯的な価格上昇のかたわら、⾯積や使⽤資材のコストを抑える「実質値上げ」も⽬⽴ちます。

住宅⾦融⽀援機構の調査によると21年度のマンションの⾯積は新築が64.7平⽅メートル、中古が68.2平⽅メートル。10年前に⽐べ新築は10%、中古は5%狭くなりました。

不動産業者の間では「資材の品質を落とす動きも⽬につく」との声も聞かれます。価格を抑えるための調整の⾯もありますが、⼀定のスペースが必要な⼦育て世帯などの選択肢は狭まっていると⾔えます。


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