2023/7/1 2:00  ⽇本経済新聞   電⼦版

国税庁は30⽇、マンションで新たに導⼊する相続税の算定ルールを発表した。専⾨家の試算で、⾼層で新しいほど税負担が増える傾向の⼀⽅、税額が変わらないケースもみられた。カギを握るのが「階数」と「築年数」だ。国税庁は2024年1⽉からの適⽤を⽬指しており、ルールの周知も焦点となる。

「乖離(かいり)の問題はマンション全体」「⼾建てとのバランスに配慮すべきだ」。算定ルールについて検討してきた国税庁の有識者会議。学識者や業界関係者ら7⼈の議論は22⽇の第3回会合でまとまった。

ルール⾒直しは評価額が実勢価格より低いことを利⽤した「マンション節税」や「タワマン節税」の抑⽌が狙いだ。新たな算定法により、現在、実勢価格の平均4割程度となっている評価額は6割以上に引き上がる。国税庁が30⽇に公表した計算式をもとに、複数の税理⼠の協⼒を得て東京都内のマンションの相続税額を試算した。⼦ども1⼈が相続する条件で単純計算した。

⾒直しの影響が強く出たのは20階建て以上のタワーマンションだ。築9年、43階建ての23 階(実勢価格約1億1900万円)で相続税額が12万円から508万円に増えた。

品川区の臨海部では築浅タワーの10階でゼロだった税額が190万円に。新国⽴競技場に近い渋⾕区神宮前のタワー低層階でもゼロから100万円に上昇した。23区⻄部のタワー25階(同8000万円)でも税負担が発⽣したが、築20年ほどで税額は18万円にとどまった。算定法⾒直しで評価額が「3000万円+法定相続⼈の数×600万円」という基礎控除を上回り、納税義務が⽣じるケースは少なくないとみられる。

⼀⽅で税額が変わらない例も。⽬⿊区東⼭で、⾒直した評価額が依然として基礎控除の枠内で、税額はゼロのままだった。低層マンションで所在階が低く実勢価格が4000万円だったことなどが影響した。

⾒直し後の評価額や税額に特に作⽤するのが階数と築年数だ。試算に協⼒した税理⼠は「築浅・⾼層で税負担は増える傾向がある。低層や地⽅⽴地のほか実勢価格が⾼くない物件などは変わらないケースも多い」と話す。

マンション節税に関する納税者の関⼼は⾼い。22年4⽉に最⾼裁で過度な節税を認めない判決が出て以降、ランドマーク税理⼠法⼈に富裕層から相談が相次ぐ。代表の清⽥幸弘税理⼠は「評価額が上がって納税額が増えたとしても、ルールが明⽰されたほうが国税当局に突然課税されるリスクが下がり、予測可能性の観点から望ましい」と話す。

税負担増はマンション市場に影響する可能性もある。⼤⼿不動産会社によると、同社のマンション購⼊検討者で資産・投資運⽤⽬的は1割弱。うち1割程度が相続⽬的の可能性が⾼いという。

業界では13〜15年ごろにマンション節税ブームが起きた。「もともとアパートなどを所有していた富裕層が都内にマンションを買うケースが増えた。10億円の物件を買う動きもあっ た」(⼤⼿税理⼠法⼈)

新ルールで節税効果が薄れれば「マンションを売却してほかの資産に資⾦を振り向ける動きが広がり、中古マンション価格が下がる可能性がある」(東京カンテイの⾼橋雅之主任研究員)との懸念もある。


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