2023/6/30 12:04  ⽇本経済新聞   電⼦版

国税庁は30⽇、相続税の新たな算定ルールを発表した。相続税の課税のもととなるマンションの評価額が「実勢価格」の6割以上に引き上げられる計算で、「マンション節税」を抑⽌する狙い。2024年1⽉1⽇からの適⽤を⽬指す。

マンションの評価額は現在、実勢価格の平均4割程度にとどまり、タワーマンションの⾼層階などで評価額の低さを利⽤した節税策が富裕層を中⼼に広がっていた。1964年の通達に基づく現⾏ルールを抜本的に⾒直し、税負担の公平化を図る。国税庁が近く通達改正案をまとめ、パブリックコメント(意⾒公募)を実施する。新たな算定ルールは、築年数や階数などに基づいて「実勢価格」を計算し、相続税額の根拠となる評価額を引き上げる内容。30⽇までに開かれた国税庁の有識者会議で了承を得た。

マンション全般が対象となるが、特に影響が⼤きいとみられるのが総階数20階以上のタワーマンションだ。全国に1400棟以上あり、総⼾数は38万⼾を超える。

国税庁が全国のタワーマンションについて2018年のデータを抽出調査したところ、平均して実勢価格と評価額に3.16倍の乖離(かいり)があった。「多くのタワマンで税負担が増え る」(相続税に詳しい税理⼠)との⾒⽅もある。

有識者会議で⽰された資料を基に試算すると、都内にある築9年の43階建てマンションの23 階にある1室(実勢価格約1億1900万円)を⼦ども1⼈が相続した場合、相続税額は約508万円と従来の約12万円から500万円近く増えた。

国税庁が算定ルールを⾒直すきっかけになったのが22年4⽉の最⾼裁判決だ。過度な節税策を否認した国税側の追徴課税を認め、判決理由で「他の納税者との間に看過しがたい不均衡が⽣じ租税負担の公平に反する」と⾔及した。

それを受け、政府も23年度の税制改正⼤綱で「市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」と明記。国税庁が23年1⽉に有識者会議を⽴ち上げ、算定法の⾒直しを進めてきた。

同庁は今後、通達改正と並⾏して、新ルールの周知を急ぐ。


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