2024/3/17 5:00 日本経済新聞 電子版

分譲マンションで「第三者管理方式」を導入する事例が増えています。物件を所有する住民ではなく、管理会社が管理を担う場合が目立ちます。住民は手間を省けるものの、修繕工事が割高になるような問題も生じており、国土交通省は同方式を採用する際の指針見直しを進めています。

マンションの維持管理は各部屋を購入した住民で構成する管理組合が担います。理事会を設置し、住民から選んだ理事を中心に日常的な管理の仕方や建物や設備の補修などについて話し合って決めるのです。この場合、理事長がマンションの管理者になります。実際の管理は管理会社に委託する場合が一般的です。

最近では理事のなり手がいなくて困っているマンションが目立ちます。住民の高齢化に加えて、「面倒くさい」「誰かがやってくれればいい」という無関心層が増えているためでしょう。理事会への出席などの負担が加わるので、仕方がない面もあります。

このため、2016年の標準管理規約の改正の際に盛り込まれたのが外部の専門家が理事や理事長になる第三者管理方式です。マンションは住民共通のルールとして管理規約を定めますが、そのひな型として国交省が示すのが標準管理規約になります。

当時は第三者として建築士やマンション管理士などを想定していたのですが、管理会社が管理者になる事例が増えています。国交省が昨年12月に管理会社の業界団体を対象に実施した調査では、回答があった会社の3割(48社)が同方式を導入しており、物件数は約2000に上りました。

投資用マンションのように所有者があまり住んでいない物件だけでなく、所有者が暮らすマンション(投資用との重複含む)でも約740件ありました。住民からみれば「付き合いがある管理会社に任せれば安心」と考えるのでしょう。最近では分譲する時点から第三者方式を導入するマンションもあります。

しかし、管理会社は組合から仕事を受注する立場です。その会社が管理者になるということは発注者と受注者が同じになるわけで利益相反が生じかねません。実際、国交省の別の調査では、第三者方式を導入している会社の半数近くが、自社の関連会社でその物件の大規模修繕工事を「受注している」「受注する場合がある」と答えています。

国交省は新たな指針案で管理者の業務をチェックする監事を置くことや、大規模修繕は住民と外部専門家からなる修繕委員会を設けて検討することを求めていますが、問題は改善するのでしょうか。マンション管理士の若林雪雄さんは管理会社が管理者になることについて「望ましくない」としたうえで、「今後は住民がしっかりと管理する優良なマンションと、管理会社任せのマンションの両極に分かれる」と話しています。
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マンション管理士の若林雪雄さん
「背景に住民の高齢化や無関心」
マンションの第三者管理方式とはどういうものなのか。何が問題なのか。東京都マンション管理士会の元副理事長でマンション管理士の若林雪雄さんに聞きました。


――マンションの第三者管理方式というものは何ですか。
「マンションの運営は通常、理事会方式になっています。管理組合の構成員、つまり住民から理事を選んで運営を担います。そして理事さんのなかから互選で理事長を選ぶ。ですから理事長さんが管理組合の責任者になるわけです。住民ではない外部の人間が責任者になるのが第三者管理方式です」
「区分所有法には管理者という別の言葉が出てきます。管理者は住民でなくても外部の人間や法人でも構わない。投資用の物件やリゾートマンションは所有者があまり暮らしていないので管理会社が管理者になる場合が多い。それが一般の分譲マンションにも広がってきました」


――どうして広がってきたのですか。

「ひとつは管理組合側の事情です。高齢化が進み、病気などで組合の役員をできない人が増えてきました。若い世代ではマンションの管理には無関心な人も多く、役員になるなど真っ平ごめんという人もいます」

「管理会社側の理由もあります。管理会社の仕事は労働集約的なのですよ。理事会の準備や住民への説明などにかなりの時間を取られます。そうした仕事を合理化し、採算性を上げるためには自分たちが管理者になるのが手っ取り早い。この方式を採用したマンションでは理事会がない場合が多いので、年1回の総会で報告して承認を得るだけで済みます」


――最近では分譲する段階からこの方式を採用する物件が増えているようです。
「分譲業者がマーケティングをするなかで、最初から第三者方式にしても物件はある程度売れることに気づいたわけです。面倒な役員にならなくていいですよ。我々が全部やります。しかも専門的にやるのですよ。これがキャッチフレーズです。新築物件だけでなく、既存のマンションでもこの方式に切り替える動きが広がっています」


――管理会社が管理者になった場合の問題点は何ですか。
「管理者は本来、組合、つまり住民の利益を最大化する責務があるはずです。しかし、例えば大規模修繕工事で自分が所属する管理会社が見積もりを持ってきて、それが他の業者よりも高かった場合、高いからダメと言えるでしょうか」
「管理費の滞納が増えた場合もそうです。それで懐が痛むのは管理組合であって管理会社ではない。そうすると滞納を減らすことにあまり努力しないですよね」


――国土交通省は指針を改定するなかで、監事を置いたり、修繕委員会を設けたりすること
を提案していますが。

「監事の仕事は理事会の運営が規約や法律に沿っているかなどをチェックすることです。大規模修繕についておかしいなどとは普通は言えません。修繕委員会を設けることは悪くはありませんが、外部の専門家の協力を得ないと、うまくいかないでしょう」
「管理会社が管理者になるのは望ましくない。通常の管理業務と管理組合のマネジメントを支援する仕事は本来、まったく別です。米国ではちゃんと分けています。結局、このままいマンション管理士の若林雪雄さんくと住民がしっかりと管理している優良なマンションと管理会社任せのマンションの両極に分かれていくのかもしれません」

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