2023/6/28 16:10  ⽇本経済新聞  電⼦版

東南アジアの⾼級ホテルが相次いで⽇本市場に参⼊する。タイ財閥のセントラル・グループが7⽉に⼤阪で開業するほか、シンガポールのカペラホテルグループも2025年に京都へ進出する。新型コロナウイルス禍の渡航制限の撤廃と円安を追い⾵に、旺盛な訪⽇旅⾏需要を取り込む。

訪⽇外国⼈に⼈気の繁華街、⼤阪・難波。駅に近い好⽴地で7⽉1⽇、「センタラグランドホテル⼤阪」が開業する。セントラルのホテル事業会社センタラ・ホテルズ&リゾーツと⼤成建設、関電不動産開発の合弁会社が約80億バーツ(約320億円)を投じ、地上33階建てで515室のホテルを建設した。

6⽉28⽇に開催した内覧会では、タイと⽇本の⽂化をイメージした客室やレストランなどが公開された。レストランはタイで⼈気のある屋外テラスで飲⾷できるルーフトップ型など8カ所を備える。フロントなどではタイ⼈スタッフも働く。

1室の広さは27〜56平⽅メートルで、客室単価は平均3万5000円に設定した。宿泊客の7割を訪⽇外国⼈と⾒込む。7〜8⽉の客室の予約状況は5割という。記者会⾒した中川繁樹総⽀配⼈は「25年の国際博覧会(⼤阪・関⻄万博)に向けてセンタラの認知度を上げていきたい」と述べた。

センタラはタイの主要都市のほか、カタールやベトナムなどで90カ所のホテルを展開する。東アジアに進出するのは⼤阪が初めてだ。ティラユット・チラティワット最⾼経営責任者(CEO)は「⾷や⽂化が洗練されている⽇本は、タイを含む東南アジアの⼈々から⼈気が⾼い」と話す。

タイの⽼舗ホテル、デュシット・インターナショナルも6⽉、京都に⽇本初進出となる「ASAI(アサイ)京都四条」を開業した。料⾦は1万円台からで⽐較的若い世代を対象にする。9⽉にはJR京都駅近くに旗艦ブランドの⾼級ホテル「デュシタニ」もオープンする予定だ。

デュシットは14カ国で300超のホテルやリゾートなどを運営する。京都のホテルではタイ料理やスパを提供し、宿泊者をタイなどで展開する別のホテルに呼び込む役割も担う。アサイ京都四条に宿泊したオーストラリア⼈のビエナさんは「豪州でもタイ料理の⼈気は⾼い」と話した。

相次ぐ⽇本進出の背景にあるのが、東南アジアからの訪⽇旅⾏者の増加だ。タイやシンガポールなど東南アジア主要6カ国からの訪⽇外国⼈は23年1〜5⽉に146万⼈だった。国・地域別で全体の17%を占め、韓国(30%)の次に多い。渡航制限の撤廃と円安で旅⾏しやすくなっている。

所得向上で消費拡⼤も⾒込まれる。独調査会社のスタティスタの予測では、東南アジアの⼈々がホテルなどの宿泊に費やす1⼈当たりの年間⽀出額は、28年に513ドル(約7万4000 円)と22年⽐で60%増加する。

独コンサルティング⼤⼿、ローランド・ベルガーの下村健⼀アジアジャパンデスク統括は「東南アジアのホテルブランドにとって⽇本は地理的に近く、欧⽶に⽐べて展開しやすい」と指摘する。

地盤の東南アジアから送客しつつ、欧⽶や中国からの訪⽇客も取り込む戦略だ。訪⽇旅⾏の⼈気を当て込んで、⾼級リゾートホテルが富裕層を対象にした施設を計画する動きも⽬⽴つ。

シンガポールのカペラは25年夏にも京都で⽇本初進出のホテルを開業する。花街として知られる宮川町で、NTT都市開発が進める再開発事業に参画する。ホテル建設は著名建築家の隈研吾⽒の設計事務所が監修する。

カペラはアジアを中⼼に⾼級リゾートを展開する。シンガポール・セントーサ島の旗艦ホテルは18年に⽶朝⾸脳会談の会場にもなった。最も安い部屋でも1泊10万円ほどする超⾼級ホテルだ。

同バンヤンツリー・ホールディングスも京都や箱根で旗艦ホテルの開業を計画する。「⽇本⼈が利⽤するには⾼すぎる外国⼈富裕層向けのリゾート化が⽇本各地で起こっている」(ローランドの下村⽒)

⽇本や欧⽶系の⾼級ホテルも新規開業を予定しており競争は激しい。⻄武・プリンスホテルズワールドワイドは7⽉1⽇、⼤阪市に上級ブランドの「グランドプリンスホテル⼤阪ベイ」を開業する。⽶ヒルトンも25年にJR⼤阪駅北側で最⾼級ブランド「ウォルドーフ・アストリア⼤阪」を開業する予定だ。

⼤阪観光局は今夏にも訪⽇客がコロナ禍前の⽔準に戻るとみており、担当者は「近くホテル不⾜のエリアが出てくる」と指摘する。関⻄は⾸都圏に⽐べ富裕層向けのホテルが少なく、ホテル開発が盛んになっている。

世界的に展開する欧⽶系ホテルは知名度が⾼く、各地で利⽤できるポイント制度や顧客情報の共有で先⾏する。東南アジア勢が対抗するには、⾃国での顧客との接点を活⽤するなど地道な取り組みが求められそうだ。

――なぜ⽇本進出を決めたのですか。

「⾷や⽂化に優れ、清潔で素晴らしい国だ。今後も外国⼈観光客が増加するとみられポテンシャルが⼤きい」

「⼤阪はビジネスや買い物が中⼼になりがちな東京と異なり、京都、奈良、神⼾といった観光地とも近い。(外国⼈は1回の利⽤で)3〜4泊の宿泊を⾒込んでいる」

――⽇本で事業を拡⼤する考えはありますか。

「京都や東京での開業を検討している。2026年ごろまでに決定したい。⼤阪の開業で注⽬され、新たなプロジェクトが動き出すことを期待している」

――欧⽶系ブランドにどう対抗しますか。

「タイのブランドとして⾏き届いたサービスを提供する。その上で、東南アジアでデパートなどを展開するセントラル全体の顧客基盤を活⽤し、知名度を⾼める取り組みを進める」

「パートナー契約を結ぶシンガポール航空のほか、⽇本ではJ・フロントリテイリングと協⼒し、顧客の取り込みを進めるつもりだ」


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