2023/8/5付  ⽇本経済新聞  朝刊

相続や離婚など夫婦、親族間での争いは感情的な対⽴に発展しがちです。話し合いが不調でも、何らかの結論を出さなければならないこともあります。家庭内の紛争を解決するには「家事調停」を使う選択肢があります。

Q 調停とは何ですか。

A 裁判所が関与し、話し合いでトラブルの解決を⽬指す⼿続きです。中⽴な⽴場の調停委員などが当事者の⾔い分を聞き、解決案を提案するといった関与をして合意による解決を図ります。調停委員は専⾨的な知識を持つ⼈や地域社会での経験が豊富な⼈の中から選ばれます。調停には⼤きく「家事調停」と「⺠事調停」の2種類があります。

Q 2つの違いを教えてください。

A 家事調停は主に家庭内のトラブルが対象で、家庭裁判所が解決にあたります。離婚や相続に関することが多く、⽐較的⾝近なものといえるでしょう。⺠事調停は給料の未払いなど他⼈との紛争が対象で、地⽅裁判所や簡易裁判所が担当します。解決に向けた⼿続きは基本的に同じです。

Q 調停にはどのようなメリットがあるのですか。

A 紛争の最終的な解決策は裁判です。ただ、裁判は弁護⼠費⽤などのお⾦や時間がかかりがちです。調停は専⾨家の⼿を借りずに⼿続きができます。初期費⽤も数千円で収まります。裁判が何年もかかることがあるのに対し、調停は半年前後で終わることが⼤半です。

Q ほかにもありますか。

A 秘密が守られるのもメリットでしょう。特に離婚や相続など家庭内のトラブルはプライバシーに関わる情報が扱われます。裁判は原則公開のため、ためらう⼈もいるかもしれません。調停なら⾮公開で⼿続きが進み、関与する調停委員には守秘義務があります。最終的な決着は双⽅の合意によるため、裁判の判決を受けるより感情的なしこりが残りにくいとの指摘もあります。

Q 具体的にはどのような⼿続きになるのでしょうか。

A 家事調停を前提に説明しましょう。まずは当事者が家裁に申し⽴てをします。家裁の窓⼝やウェブサイトから申⽴書を⼊⼿し、必要事項を記⼊して提出します。併せて⼿数料にあたる収⼊印紙1200円分と連絡⽤の郵便切⼿、⼾籍謄本などの書類が必要です。申し⽴てが受理されると「調停期⽇」が決められ、申⽴⼈と相⼿は裁判所から呼び出されることになります。

Q その後の進め⽅は。

A 裁判官と調停委員による調停委員会が、トラブルの当事者から事情や意⾒を聞きます。当事者が対⾯するのが適当でない場合は別々に話を聞きます。「ウェブ会議」のこともあります。通常、1つの事案につき話し合いや事情を聞く機会を⽉1回は設けるようにしているようです。そのうえで調停委員会は解決案を提⽰するなどします。最終的に当事者の合意が得られれば家裁が「調停調書」を作成し、終了します。

Q 調停調書には何が書かれるのですか。

A 当事者の合意した内容です。例えば遺産分割トラブルの場合、相続⼈のうち誰が、どの資産をいくら受け取るかといったことが記載されます。離婚の場合は財産の分け⽅や慰謝料、養育費などです。調停調書に記載された内容は確定した判決や審判と同⼀の効⼒があります。仮に合意が守られなかった場合、内容によっては裁判所に申し⽴てて強制的に義務を履⾏させることもできます。

Q 合意に⾄らなかった場合はどうなりますか。

A 当事者同⼠が合意できず、解決する⾒込みがない場合は⼿続きを打ち切ります。遺産分割や養育費請求など特定のトラブルでは、調停を打ち切ると⾃動的に審判に移り、裁判所が解決策を決めることになります。