筧家のダイニングルームでは相続の話が続いています。富子は「相続税の負担を軽くするには、生きているうちに財産を子や孫に譲ればいいね」と、手を打ち合わせます。幸子は「生前贈与での節税は常道ですが、制度が変わったんです」と、背筋を伸ばします。

富子 制度が変わったとは知らなかった。主な内容を教えてちょうだいな。

幸子 まず相続節税で最も一般的なのが、時間をかけて少しずつ財産を子や孫に譲る暦年贈与です。基本、贈与された人に贈与税がかかりますが、年110万円までの基礎控除の範囲なら非課税です。ただ相続開始、つまり亡くなる直前に贈与された分は話が別で、相続税の対象となる財産に加算されます。

良男 いつ贈与すると加算されるのかな?

幸子 これまでは亡くなる前の3年間の贈与分を相続財産に加算する決まりだったけれど、2024年の贈与分から対象期間が見直されて、31年の相続開始分からは7年間となるの。

富子 年取ってから贈与を始めると相続税がかかるリスクが高まるね。私はもう遅いかね。

幸子 お母様は100歳まで生きますから大丈夫ですよ。それはともかく、税理士の橘慶太さんのところには24年になって相続税対策に関する問い合わせが増えているそうです。橘さんは「相続時精算課税制度を活用するのが一案」と助言します。

富子 長い名前の制度だね。

幸子 相続時精算課税は贈与税のかかり方の一つです。年齢条件がありますが、生きている間は累計2500万円の特別控除枠内なら何回贈与しても贈与税がかかりません。2500万円を超えた分は一律20%の贈与税がかかりますが、暦年贈与の税率の最高55%に比べれば税負担が低くなります。

良男 おっ、いいな。

幸子 ただ、特別控除枠で贈与された財産は、亡くなったとき相続財産に足し戻され、相続税の計算対象になるの。

良男 がっかり。贈与の意味がないじゃないか。

幸子 そうでもない。まず特別控除の贈与分と相続分を合わせて相続税の基礎控除に収まれば、贈与税も相続税もかからないから税負担はゼロ。さらに暦年贈与の変更と併せて相続時精算課税制度に新たに基礎控除枠ができて、24年1月から年110万円まではいつ贈与しても非課税となった。

富子 亡くなる直前は話が違うんじゃなかった?

幸子 相続時精算課税の基礎控除枠は、極端に言えば亡くなる数日前の贈与でも相続財産に足し戻さなくて大丈夫です。ただし使う際は最初に税務署に届け出が必要で、その後の贈与は有無を言わさず相続時精算課税制度が適用されます。「やっぱりやめて暦年贈与に戻す」とはできないのが注意点ですね。

良男 相続節税と言えば、華麗なる一族の同僚が「親が相続対策でマンションを買ったが節税しづらくなった」って。

幸子 それも24年の変更よ。24年1月以降に相続したマンションの相続税評価額の算出ルールが変わったの。相続した不動産の価値は基本、市場価格より低い相続税の評価額で計算する。なかでも戸数が多いマンションの住戸は土地の所有割合が少なく相続税の評価額がぐっと下がる。平均で実勢価格の4割程度で、戸建て住宅などと比べて不公平だと指摘されてきた。

富子 どういうことなの?

幸子 例えばタワーマンションで人気の高層階は、1億円で売却可能でも相続税評価額は4000万円程度になり、現金1億円を継がせるより相続税を減らせます。「タワマン節税」と呼ばれていました。24年1月以降の新たな計算式では評価額が実勢価格の6割以上に引き上げられます。税理士の松岡章夫さんによればルール変更で評価額が2倍になるケースもあるそうで「早めに評価額を算定し、どの程度の相続税がかかるのかを知ることが大切」だそうです。

富子 そう言えば町内会の知り合いは、相続した田舎の家の名義をまだ変えていないって。

幸子 そういう人も制度変更の影響を受けますね。24年4月から相続登記が義務になり、原則、相続を知った日か24年4月1日の遅い方から3年以内に登記しなければなりません。

良男 4月から変更だろう?

幸子 それが、この変更は旧制度下の3月までの相続も対象なの。例えば過去に相続し、亡くなった人の名義で放置している土地は27年3月末までに登記する必要がある。そもそも相続でもめたりして放置され、時間がたって所有者が不明になった土地が多いことが問題視されてできた制度なの。正当な理由なく登記しないと10万円以下の過料に処せられる可能性もある。

良男 現にもめていたら義務と言われても登記できないよ。

幸子 「もめている」「時間がたって相続人が増えてしまい書類の準備や相続人の把握が大変」などは正当な理由になる。期限に間に合わない場合は、相続人の氏名や住所などを申し出れば登記申請義務を果たしたとみなす「相続人申告登記制度」も新設された。ただ、その後に遺産分割協議が成立したら、それから3年以内に相続登記が必要なので、一時しのぎね。司法書士の本所夕霞さんは「遺言書を作り、誰に相続させるのかを決めておけばトラブルを防ぎやすい」と指摘していたよ。

富子 やはり、もめないのが一番の対策なのね。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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