⽼朽物件の増加⾒据える

法制審議会(法相の諮問機関)は8⽇、分譲マンションの修繕などを住⼈が決議する際の要件を緩和する中間試案をまとめた。住⼈集会の決議を出席者の過半数の賛成で成⽴できるようにする案を盛った。⽼朽マンションの増加を⾒据え、地域の安全や景観に配慮した街づくりを促す。

7⽉にもパブリックコメント(意⾒公募)にかけ、法制審の部会で結果を踏まえた検討を進める。2024年通常国会に区分所有法の改正案の提出をめざす。

都市部で1970年以降に⼤量供給されたマンションの⽼朽化が社会問題となっている。修繕を怠ると外壁がはがれる事故や倒壊といった危険を招く。街の景観を悪くし地域経済が後退する要因にもなる。

法制審の中間試案はマンションの管理と再⽣の2つに焦点を当てた。

管理を巡っては修繕などの決議を「出席者過半数」に変更する。⽋席の場合は委任状や議決権⾏使書による賛意表明がなければ反対として扱われているため、現状のままでは必要な決定ができない懸念がある。

エレベーターの設置など建物の構造を変えるような⼤規模改修に必要な要件も緩める。現在は所有者の4分の3以上の同意が必要だ。多数決割合を引き下げたり、出席者の4分の3で決めたりする案を記載した。

海外に住む所有者向けには代理⼈による管理制度の創設を盛り込んだ。本⼈が不在でも代理⼈の判断で部屋に⼯事で⽴ち⼊れるようにする。所有者の所在が不明で管理に⽀障が出た際の対応も記した。裁判所が弁護⼠や司法書⼠などを選任し、代わりに専有部分を管理できるようにする。

再⽣に関してはマンションの建て替えを決める際の要件を緩める。現在は所有者の5分の4の同意を得なければ決定できない。所在不明者を決議の⺟数から除外するとともに、多数決割合の緩和で2案を⽤意した。

①4分の3に引き下げ客観的な理由がある場合は3分の2②現⾏の5分の4を維持し客観的な理由がある場合は4分の3――とした。客観的な理由には耐震性の不⾜や⽕災への安全性、外壁 はげ落ちのおそれ、給排⽔管の腐⾷などを挙げた。どれを採⽤するかで複数案を設けた。

国⼟交通省によると、築30年以上の分譲マンションは21年末時点で全国に249万⼾ある。20 年後にはおよそ2.4倍の588万⼾になる⾒通しだ。