2024/5/9付 日本経済新聞 朝刊


資産規模1兆2399億ドル(約190兆円)を誇る中国の政府系ファンド(SWF)、中国投資(CIC)が、日本の中堅・中小企業に的を定めている。質の高いサービスや企業価値が割安な企業を、中国の巨大な消費市場で開花させる。開示される情報が限られているなか、経済安全保障上の議論となる可能性もある。


「日本人施術師の週末の予約は3週間先までいっぱいです」。中国広東省深圳市の整体サロン「カ・ラ・ダ ファクトリー(カラダファクトリー)」に日本式の高品質なサービスを求める中国人客の予約が殺到している。


定価は60分688元(約1万5000円)と日本(8900円)の約1.7倍にのぼる。同社の施術師は約100時間の研修受講が必須で、どの店舗でも均一の安定したサービスを受けられるのが売り物だ。
長年のデフレで鍛えた日本の高品質のサービスは、整体の本場である中国でも好評を博している。2023年3月の開業から1年余りで、予約の約6割が常連客となった。香港からの「インバウンド」客も多く、日本のブランドが脚光を浴びている。

運営会社ファクトリージャパングループ(東京・千代田)は、CICが日本企業投資を目的に野村ホールディングス、大和証券グループ本社などと共同で設立した対日投資ファンド、ジャパン―チャイナ・キャピタル・パートナーズ1号ファンドが、22年に株式100%を取得した。

ファクトリージャパングループの春名秀樹副社長は「CICに、深圳の出店候補地や法人顧客を紹介してもらった」と明かす。
同社は今後中国でフランチャイズチェーン(FC)を展開する。中国でのCICの存在感の大きさを生かして、中国本土の店舗数を現在の3店舗から26年に53店舗に拡大したい考えだ。

CICの対日投資ファンドが主な投資対象とするのは、非上場の中堅・中小企業で、日中ビジネスで企業価値を拡大できる企業だ。4月には日本語教育機関に出資した。具体名は明らかにしていないが、「日本の大学・大学院への進学を目指す学生に対し、日本語を中心とする教育を提供」する、業界を代表する教育機関という。

CICは17年以降、米国、英国、日本、イタリア、フランス、ドイツのトップ金融機関と共同で相次いでこうした海外投資ファンドを設立した。CICによると、22年末時点で先端製造業、医療、金融サービス、消費関連など20社超の企業に投資したという。

なかでもCICが「非常に良い価格で買収できる」(祁斌副総経理兼首席投資官)と手放しで評価するのが日本の非上場の中堅・中小企業だ。

祁氏は「日本には伝統的な家族経営企業や中小企業が多数あり、その質は非常に高い。世界中に事業展開しながら日本の地方に本社を置く企業も多い」と話す。祁氏は「このチャンスをつかまなければならない」と強い投資意欲を示す。

ただ中国マネーによる投資は、今後、日本の経済安全保障上のリスクとなる可能性がある。
米調査会社ディールロジックによると、日本が売り手で中国が買い手のM&A(合併・買収)は16年が直近のピークで最近は20社前後で推移している。

米国が対中制裁を強める中、習近平(シー・ジンピン)指導部は、半導体に代表される先端製造業などの育成を急ぐ。中国市場は成熟してきており、高品質の商品やサービスを求めるニーズは高まっている。今後は日本のサービスや先端製造業などが買収候補となる可能性は小さくない。

CICは欧米の金融機関トップらをメンバーとするインターナショナル・アドバイザリー・カウンシルを設け、透明性をアピールしている。ただCICの具体的な投資先の情報開示は極めて限られている。投資家として世界で幅広く受け入れられるには、運用の透明性の改善と説明責任の履行が欠かせない。

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