2024/1/14 5:00  ⽇本経済新聞   電⼦版

⽇本は⼈⼝が減る。住宅事情は良くなるだろう。都⼼はまだまだ⼈気かもしれないが、郊外では広々とした新築に住めるかも。期待しながら不動産店を訪ねたら「新築は無理ですね。

⼤⼯がいません」。全国に2000万⼾ある空き家は壊れ、とてもじゃないけど住めない。2050年、孫たちは「家なき⼦」になる。

23年末、静岡県焼津市で築50年弱のある空き家が姿を消した。賃貸⽤だが、借りる⼈は約10 年も⾒つからず放置された。屋根材などが傷んで危険になり、所有者は数⼗万円をかけて解体した。新たな⽤地使途は⽩紙で、当⾯は更地だ。

⽇本中、家はある。しかし住めない家が増えている。空き家は18年に約849万⼾と7⼾に1⼾となり、野村総合研究所の予測では38年に最⼤で2356万⼾と総住宅のうち3⼾に1⼾を占める。

住宅の解体は13〜17年度に進んだが、勢いが緩めば⼀気に空き家が増えると推定される。同研究所の⼤道亮チーフエキスパートは「変動要素はあるが、基本的に38年以後も空き家は⼾数も⽐率も悪化⽅向に向かう」と警戒する。

新築を中⼼とした住宅事情も変わる。⼈⼝減で住宅需要は減るが、それ以上に供給⼒が落ちる。野村総合研究所は新築の動向も予測しており、40年の需要は10年より33%減るが、供給⼒は同50%も減る。家が欲しくても、そもそも物件が⾒当たらなくなる。

新築がなければ空き家活⽤の好機になるはずだ。現実は厳しい。国の調査では18年時点で居住世帯がある住宅約5360万⼾のうち、約700万⼾は耐震性が不⾜している。新耐震基準でも約3450万⼾は省エネ基準を満たさない。空き家849万⼾の詳細な性能調査は⾒当たらない が、居住世帯のある家より良い状態とは考えにくい。

空き家直せず

多くの空き家は住むには修繕が必要になる。しかし、直す⼈も⾜りない。⼤⼯は20年に30万⼈を切り、40年代半ばには10万⼈を下回るとの予測もある。減少は全国⼀律ではなく、⽪⾁にも「既に空き家が多い地⽅郊外ほど先⾏する」(⼤道⽒)。

住宅を建てたり修繕したりできても、住環境を整えるには別の⼈材もいる。リクルートワークス研究所の古屋星⽃主任研究員は「道路など必須インフラの維持や修繕を担う建設⼈材も⼤幅に不⾜する」と話す。同研究所は、インフラ関連も含む建設労働への需要は40年もなお298.9万⼈に上るが、供給は233.2万⼈しかなくなると予測する。

古屋⽒は「居住エリアの制約に直結する」と話す。地⽅では家はあっても修繕を頼めず、インフラの維持、整備もままならない。⼈材減が相対的に緩やかな都市部に移る⼈は多くなるが、新築供給⼒は落ちている。不便で危険な中古物件に我慢して住むしかない⼈が増える。こうした未来は避けたい。まずは限られた⼈材が効率良く働ける仕組みが⽋かせない。

スタートアップのクラッソーネ(名古屋市)は空き家の所有者と解体⼯事会社をインターネットで仲介する。約1.5万件の実績がある。営業に苦労する解体会社を個⼈とつなぎ、貴重な⼈材を⼯事へ集中させる。

23年秋には住宅情報サイトや駐⾞場運営などの異業種と「全国空き家対策コンソーシアム」を設⽴した。解体で培ったノウハウを空き家の売却や駐⾞場転⽤にも広げ、ワンストップでの対応を⽬指す。

トレコン(⼤阪市)は⼩規模な建設会社のデジタルトランスフォーメーション(DX)に活路を求める。労務管理、建設現場の進捗などを⼀元管理するシステムを開発した。

ゼネコン系とは違う下請けの視点が特徴で、ささいな現場情報の共有にまで対応する。⽑利正幸代表は「多重下請け構造の中、ボトムアップで効率化が進んで初めて⼈材不⾜は解決する」と語る。

こだわり難しく

国は中古住宅の流通策を打ち出すが、⼗分かどうか。野村総合研究所の⼤道⽒は「今後は細かいこだわりは難しく、『建てやすい家』を優先せざるを得ない」と発想の転換を促す。

個⼈は安全性に配慮しつつ細部の仕上げや修繕は「DIY」で最⼤限、対応することになる。住宅メーカーなどは専⾨家でしかできない⼯事へ⼈材を集中し、軽微なメンテナンスは個⼈へ任せられる規格や仕様にするよう知恵を絞る。

家があるのに「家なき⼦」。⽇本の住宅問題は⾜りないから、住めないに移っていく。

建設・⼟⽊作業従事者の減少は⼤きい。1980年に90万⼈以上いた⼤⼯は2045年に10 万⼈を切る。同時に⾼齢化も進んでいる。⼈材減少の中、⼀定の新築住宅を供給できたのは、⼯場で⽊材を加⼯する「プレカット」などの普及で作業効率が上がったためだ。こうした取り組みは限界に近く、さらなる省⼈化は容易でない。

外国⼈活⽤の⼤幅拡⼤も難しい。国は技能実習に代わる新制度を検討中だが、アジアには韓国や台湾など、より労働条件が良い国・地域が多い。⽇本が獲得競争で優位に⽴つ公算は⼩さい。

新築の供給が減る分を空き家で補おうにも、多くは断熱、耐震などの性能が⾜りない。

⼈⼿不⾜で修繕もままならない。空き家が多い地⽅は⼟⽊⼯事の⼈材も減り、基礎インフラの維持、修繕も思うように進まないかもしれない。

官⺠による「建設キャリアアップシステム(CCUS)」という取り組みは⼈⼿不⾜の⼀つの対策になる。⼈材の情報を登録し、技能レベル別の賃⾦モデルも⽰す。技能にふさわしい待遇を得られる環境をつくり、まずは意欲があるのに低賃⾦で悩む⼈の離職率を下げる。待遇向上を求める動きは雇⽤の流動化と賃⾦上昇を促し、将来的には⼊職率の向上にも貢献し得る。

この取り組みは住宅ではまだ普及してない。家に住む個⼈がこの仕組みで「信頼できる技能を持つ登録者に建築や修繕を任せたい」と声を上げれば、業界改⾰も加速する。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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