2024/1/5付 日本経済新聞 朝刊

2023年に日本企業が関わったM&A(合併・買収)の金額は約17兆9000億円と22年から5割増えた。M&A件数は減ったが、日本産業パートナーズ(JIP)陣営による東芝買収や日本製鉄のUSスチール買収などの大型案件が金額を底上げした。MBO(経営陣が参加する買収)での株式非公開化を選ぶ大手企業も目立った。

レコフデータ(東京・千代田)によると、23年に日本企業が買い手か売り手になったM&A(出資案件含む、決議ベース)の件数は4015件だった。過去最高だった22年から7%減った。金利上昇などの影響で企業価値評価の目線が定まりにくくなり「スタートアップへの投資を中心に減った」(レコフデータの吉富優子社長)。

一方でM&A金額は52%増の約17兆9000億円と4年ぶりの大きさになった。大型案件が相次いだためだ。日本企業同士のM&Aは件数が8%減の3071件だった一方、金額は85%増の約7兆7000億円と18年ぶりの高水準だった。

規模が大きかったのがJIP陣営による東芝の買収(約2兆円)だ。このほか政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)によるJSR(買収額約9000億円)や新光電気工業(約6800億円)の買収など、半導体の国際競争力強化を目的とした再編も明るみに出た。

国内企業による海外M&Aは件数が6%増の661件で、金額は2.3倍の約8兆1000億円に膨らんだ。日本製鉄のUSスチール買収は2兆円規模、アステラス製薬の米バイオ医薬品企業買収は8000億円規模に上る。

22年末に1ドル=130円程度だった為替相場は23年後半に一時150円超まで円安が進んだ。円を原資にする日本企業は円安・外貨高で買収コストが増すが「企業は特定技術の獲得など事業戦略上の必要性でM&Aを判断しており、為替相場はあまり気にしていない」(KPMG FASの石井秀幸執行役員パートナー)との声が聞かれた。

23年は大正製薬ホールディングスやアウトソーシング、ベネッセホールディングスなどのMBO発表も相次いだ。東証要請を背景に投資家から企業価値向上を求める声が強まるなか、上場の意義を問い直す動きが広がった。KPMG FASの石井氏は「ファンドや金融機関が積極的にMBOを働きかけており、予備軍となる企業はかなりある」と語る。

24年のM&Aも高水準が続きそうだ。経済産業省が23年8月に出した「企業買収における行動指針」では、企業価値向上につながる買収提案に対し取締役会が真摯に検討することを求めた。ニデックによるTAKISAWA買収のような「同意なき買収」提案が今後増える可能性が高い。

マクロ経済環境もM&Aに大きく影響する。デロイトトーマツグループの鹿山真吾パートナーは「米国の金利が下がればプライベートエクイティ(PE)ファンドのM&A活動が活発になり、売り物も出やすくなるだろう」とみていた。

(企業財務エディター 森国司)

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