2023/9/28 5:00 ⽇本経済新聞 電⼦版
⾼齢化の中、増加する⽼朽マンションの管理を誰が担うのかが課題だ
マンションで管理を所有者ではない⼈に任せる「第三者管理」の採⽤物件が増えている。住⼈の⾼齢化などを背景に、現在は管理会社がその役割を担う例が多い。⼤規模修繕などの 際、任された会社が⾃らに有利になるよう動く利益相反の懸念があり、国はガイドラインをつくる⽅針。ただ担い⼿は容易に⾒つからない状況でもある。将来誰が管理するのか。本質的な議論が求められる。
「資産価値の将来に疑問が残った」。第三者管理のマンションを購⼊後、すぐに売却した東京都内の40代男性はこう語る。
管理会社が管理組合の理事会の役割も担うので、所有者負担が軽くなるとのうたい⽂句にひかれて購⼊した。そこで過去に所有した別マンションでのコスト削減策を提案したところ、明確な理由なく拒まれた。男性は「コスト削減は管理会社にとっては減収という側⾯がある。結局会社に都合のよい形にしたかったのではないか」と推測する。
マンション管理組合のコンサルティングも⼿がけるさくら事務所(東京・渋⾕)には第三者管理関連の相談が多く寄せられる。担当の⼟屋輝之さんは「今後に懸念を感じる」と漏らす。
管理組合業務が減らせるなど利点も
第三者管理は2016年、国がマンション管理規約の「ひな型」を改正するなどしてルールが整い、関⼼が⾼まった。⼀般的に住⼈としては管理組合の業務負担を減らせるほか、専⾨家の関与で物件管理の質を保ち、迅速に意思決定できるのが利点とされている。
⾜元ではマンション管理会社が従来任されていた管理実務に加え、理事会などの役割まで担う⽅式が⽬⽴つ。マンション管理業協会(東京・港)の調査をもとに国⼟交通省がまとめた資料によると、第三者管理の業務を受託、または検討中という管理会社は23年時点で167社と20年から3割強増えている。
マンションコンサルタントの別所毅謙さんは「管理に無関⼼なマンションほど第三者管理を選ぶ傾向がある」と解説する。⽼朽物件だけでなく、所有者は⾃ら居住せずに賃貸へ回す投資⽬的の物件でもこうした傾向が強いという。
⼀⽅、ごく普通のマンション所有者へ熱⼼に導⼊を促す管理会社もある。「第三者管理に賛成いただけるか」。今春、都内のマンションを所有する50代男性のスマートフォンにメールが⼊った。この男性は「これまで電話で連絡があったが、多忙を理由に対応していなかったところ、突然このメールが来た。他の所有者にも同様の連絡を⼊れているようだ」と説明する。
管理会社による第三者管理を巡り、さくら事務所の⼟屋さんは「理事会業務などの分、管理会社が求める『対価』は理論上増えるはずだが、追加の費⽤は『軽微もしくは不要』という働きかけも多い」と話す。
管理会社は週末などに開く理事会への社員の出勤を省くなどできれば⼿間や費⽤を減らせる。ただ多岐にわたる理事会業務の負担をこうした省⼒化だけで吸収できるとは限らない。
管理会社に有利︖ 利益相反のチェック難しく
場合によっては⽇常的な管理費、⼤規模修繕⼯事費などで管理会社側に有利な内容となっているおそれがある。そうした利益相反のチェックは管理組合が担うのが原則だが、正確な判断は難しい。管理会社と関係ない外部の専⾨家などを新たに雇ってチェックすると費⽤負担が膨らむ。
組合運営や合意形成、経験積めず
ただガイドラインができて不適切なケースをある程度減らせても、別の問題が残る。「第三者管理に移⾏した場合、管理組合内部の管理ノウハウは基本的に急速に失われる」組合運営や合意形成に向けた議論の経験が乏しい所有者ばかりになると、通常の理事会⽅式へ戻すのも難しい。
国交省の調査では所有者が世帯主ベースで60代以上が中⼼というマンションが多く、第三者が管理へ関わる仕組み⾃体の必要性は⾼い。⼀⽅で利益相反の懸念を払拭できる「第三者」とは誰なのかという議論は必ずしも⼗分ではない。マンション管理⼠などの専⾨家も地域によっては不⾜が深刻なうえ、資質や意識の個⼈差も⼤きい。都内のあるマンション管理⼠は「管理組合より管理会社と親密な管理⼠もいる。そうした⼈に第三者管理を担わせると、利益相反の懸念がある」と明かす。
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