2023/9/28   5:00 ⽇本経済新聞  電⼦版

マンションを巡り多様な問題が起きている。マンション管理・再⽣を⽀える基礎となる区分所有法は、2024年の通常国会での改正を検討中だ。だが同法の改正だけでは問題を予防・解消できない。新たな住宅政策や居住政策が必要だ。

まずマンションを巡る具体的な問題をみていこう。

第1に管理放棄の問題である。築50年にもならないマンションの全住⼾が空き家になり、管理もなされず、近隣からの苦情が相次ぐ事例が増えている。⾏政が解体の代執⾏・略式代執⾏に踏み切っても、ことはこれで終わらない。費⽤回収が困難だからだ。⾏政は所有者の特定などに努めるが、私有財産には簡単に⼿が出せない。地域や近隣への悪影響をこれ以上放置できないという段階になって初めて⾏政は⼿が出せるのだが、これでは遅すぎる。

第2に管理不全の問題である。東京都では1983年以前に建築されたマンションの約17%に管理不全の兆候がある。管理組合がない、管理者がいない、管理規約がない、総会が開かれていない、管理費を集めていない、修繕積⽴⾦を集めていない、修繕が計画的に実施されていないなどのケースが挙げられる。こうしたマンションには⽀援が必要となる。埼⽟県所沢市では要⽀援マンションの割合が4割弱に達するなど、適正に管理できていないマンションが全国に存在する。

第3に管理不全マンションの予備軍として、修繕費が不⾜する事例が多い。建物を⻑持ちさせるには、計画的な外壁⼯事、屋上防⽔⼯事、設備取り換えなどの⼤規模な⼯事が必要だ。その費⽤を区分所有者全員で積み⽴てているが、3分の1のマンションでは修繕積⽴⾦の残⾼が計画に対して不⾜している。

第4にいっそのこと建て替えようとしてもなかなかうまくいかない。⽇本のマンションストック約700万⼾のうち、旧耐震基準のマンションは約100万⼾にのぼる。建て替えたマンション(被災マンションを除く)は累計で282件、約2万3千⼾にとどまる。

建て替え前には容積率は2〜7割ほどしか使っておらず、建て替え後には容積率が2.3倍、住⼾数は1.6倍、部屋の広さは1.2倍になっている。しかし現実には既存不適格のマンションが多い。また建て替えたマンションは駅から徒歩10分以内の物件が8割と⽴地が恵まれていた。今後はこうしたマンションは減るため、建て替え時の区分所有者の⾃⼰負担額が増えるだろう。これまでの建て替え時の⾃⼰負担費⽤は、初期の建て替えでは1⼾あたり平均400万円未満だったが、最近では約2千万円にも達する。

その根本的原因に管理主体の空洞化がある。⽇本のマンション管理は区分所有者が全員で管理組合をつくり、総会で⼤事なことを決め、区分所有者から理事を選び、理事会が中⼼となり管理のかじ取りをする。だがその主体が⾼齢化するとともに、所在不明や空き家の増加、賃貸化の進展などで不在になる。外国に住む区分所有者も増えている。専⾨家への管理依頼や第三者管理者⽅式の採⽤を進めようとしても、お⾦がかかる。この状態では総会で⼤事なことが決められない。

こうした苦境の中でも頑張るマンションがある。22年4⽉に始まった管理計画認定制度は、管理体制を整えている管理組合を⾏政が認定する制度だ。23年9⽉15⽇時点で172のマンションが認定を受けている。

また同時にスタートしたマンション管理適正評価制度は、マンションの管理状態を5つのカテゴリーで30項⽬の状態を点数化し、その結果を6段階で⽰したものだ。1786件(23年9⽉18⽇時点)が⾃らの管理状態を公開している。最⾼評価のマンション(公開物件の約23%) は、計画的な管理に主体的・⺠主的に取り組むことで、マンションを安⼼・安全の場にして、資産価値をあげている。

共⽤部分を開放して地域の拠点になるマンションもある。多世代交流と助け合い、認知症予防や⾼齢者の安否確認に積極的に取り組むマンション、築100年までのメンテナンス計画を持つマンションもある。

⼀⽅、頑張れないマンションが抱える問題の予防や解決には、どのような政策が求められるのだろうか。

第1に初期設定の適正化である。頑張れないマンションには共通項がある。それは当初から管理組合がなく管理をする体制がなかったことだ。規約も修繕計画も修繕積⽴⾦もなく、場当たり的に修繕をしてきた。

今後は管理不全マンション、さらには管理放棄マンションにならないように、マンション供給時から管理体制を整備することだ。これはマンションをつくり、市場に出す者の責務だ。さらにその内容が管理を進めるうえで適正な⽅向で設定される必要がある。

そもそも初期の修繕積⽴⾦が低く設定されている事例が少なくない。新築マンションの⼤半が、将来になるほど積⽴⾦が増えていく「段階増額積み⽴て⽅式」を採⽤している。同⽅式の249事例について、⻑期修繕計画の当初から最終計画年までの増額幅を分析したところ、全事例の平均増額幅は約3.6倍にもなる(国⼟交通省調べ)。将来円滑に値上げできないと費⽤が⾜りなくなる。基本は均等積み⽴て⽅式を採⽤すべきであり、消費者保護政策として必要な対応だ。

第2に所有者の責務の明確化である。不動産を持つ⼈間には適正管理の責任がある。適正管理ができないマンションを、適正に管理している⼈の税⾦を使って⽀援することが果たして適切なのか。マンションの供給者および購⼊者などによる管理基⾦を設けて、適正なマンション管理の執⾏に使うなどの対応が必要だ。

第3に管理や性能の「⾒える化」の推進である。管理の良くないマンションも耐震性能が低いマンションも同じように市場で評価されている。頑張るマンションがさらに頑張るモチベーションを⽣み出す仕組みが必要だ。管理計画認定制度、マンション管理適正評価制度を⼤いに活⽤して管理や性能の「⾒える化」を進め、頑張っていることが市場で評価されるべきだ。

第4に都市計画・まちづくりとの連携である。マンションの建て替えや再⽣をマンションだけで取り組むには限界がある。地域との連携の中でマンションを位置づけたうえで再⽣することで、地域の防災⼒が⾼まる仕組みが求められる。

第5に福祉政策との連携である。建て替えなどに参加できない居住者への対応⽅針がなければ、建て替えの決議要件を下げても建て替えは進まないだろう。

ほかにも、マンション管理の消費者教育の推進や、マンションを⽀える専⾨家の育成、マンション解体の準備⾦までを⽤意する体制の構築も求められよう。

これらの対策はマンションだけでなく、基本的には住まい全体に求められることだ。⽇本の住まいのあるべき姿を国⺠で共有し、ストック社会・成熟社会に対応した制度・政策が必要だ。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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