2023/9/27   5:00 ⽇本経済新聞  電⼦版

空き家問題が⼾建てのみならず分譲マンションにも波及しつつある現在、将来に向けた住宅市場の再構築が急務となっている。

空き家問題の源流は、⾼度成⻑期以降の住宅の⼤量供給に求められる。量の確保優先でまちが広げられ、質は後回しにされた。だが⼈⼝減少時代に⼊ると、⽴地条件の悪さなどで需要のないものから空き家になった。都市部でも新陳代謝が進まないエリアでは、空き家が⽬⽴つようになった。

空き家所有者が管理責任を果たさない状況が増えるなか、2015年施⾏の空き家対策特別措置法により「特定空き家」という状態の極めて悪い空き家の所有者にプレッシャーをかける仕組みが設けられた。そこで露呈したのは、所有者が責任を果たさないと代執⾏という形で⾏政が肩代わりせざるを得ず、時にはその費⽤を回収できず納税者負担に転じてしまうことだ。

分譲マンションの代執⾏の事例も出現し、⼾建てと⽐べ費⽤が巨額となった。図に⽰したように、平均想定解体費は1⼾あたり200万円を超える。50⼾の場合には1億円超となる計算だ。なお、代執⾏に⾄る前の段階で⾃主的解体を促すため、⾏政が解体費を補助する場合も納税者負担になることに変わりはない。

⽇本の住宅は、空き家の⼤量発⽣に象徴されるように、次世代には引き継がれずに放置された挙げ句、⾏政が後始末をしなければならない状況に陥っている。

⼀⽅、空き家の発⽣しにくい市場も考えられる。居住するエリアはいたずらに広げず都市計画上の線引きを厳しくして、その中で⻑持ちする住宅を建てて多世代にわたり活⽤し、そのエリアに住む際に通常買うのは中古物件という状態だ。こうしたまちでは、原理的に空き家が発⽣しにくくなる。新築物件となるのは、既存のストックを使い尽くして建て替えられる時だ。

⽇本の住宅市場はこうした状態とは正反対だった。まちを広げ、供給される住宅は⻑持ちするものではなかった。そうした状態では消費者は中古を好まず、需要は新たに開発された宅地での新築に向かった。

だが現在のまちづくりおよび住宅政策では、空き家の発⽣しにくい市場に変えようという努⼒はなされている。コンパクトシティー政策(⽴地適正化計画)により居住地として残すエリアを絞り込み、⻑期優良住宅の建築を優遇して住宅の⻑寿命化を図り、さらに中古住宅を適正評価する仕組みなども考えられている。

ただ問題は、これらの施策は⼀体として実施されるものではなく、まちづくり全体の中で望ましい住宅市場を形成する取り組みにはなっていないことだ。

以上は都市計画的⼿法を中⼼として、空き家の発⽣しにくい構造にしようとするものだ。⼀⽅、空き家がもたらす外部不経済(周囲に与える悪影響)を内部化する(住宅所有者に適切な費⽤負担を課す)という対処⽅法もあり得る。

特定空き家の定義にあるように、倒壊など著しく危険となる恐れ、著しく衛⽣上有害となる恐れ、著しく景観を損なっている状態などになった時に、最終的に必要になるのは解体だ。現在の問題は、所有者がこの責任を果たさないため、所有者が負担すべき費⽤を納税者全体で負担する状況になっているということだ。

納税者全体の負担になる状態を解消するには、住宅所有者に対し、⼾建てか分譲マンションかを問わず、建築時に将来必要になる解体費⽤の供託や積み⽴てを義務化する⽅法が考えられる。住宅所有者は当初、こうした負担をしても、⼟地を売却できれば解体費⽤を回収できる可能性が出てくる。つまり⼟地の売却価格が解体費⽤以上になれば、解体費⽤は回収できる。

このことを消費者が厳しく受け⽌めれば、住宅を所有する場合、将来に⼟地としての価値が残りその価値が解体費⽤以上の⼟地が望ましいということになる。そうしたエリアはコンパクトシティー政策における居住誘導区域に近いものが想定できるかもしれない。そう考えると、解体費⽤確保の義務づけは、まちを広げないという都市計画的⼿法と似た帰結をもたらす。

ただし、消費者が解体費⽤は回収できなくてもいいと考える場合は、価値が残るエリア外の住宅所有を妨げられない。コンパクトシティー政策を徹底する場合に⽐べて、道路、上下⽔道などのインフラ整備・維持の費⽤を⾏政が余計に負担しなければならなくなる。

またそうしたエリアの住宅が解体された場合でも、⼟地については需要がなく売るに売れない状態になるという問題も出てくる。この場合、所有者は取得した⼟地について将来にわたり固定資産税を払い続け、管理も求められるという状況に直⾯する。現実的にそれは困難だということになれば、そうした⼟地を誰が管理すべきかという国⼟管理上の問題が発⽣する。

そこで出てくるのが、所有者が将来必要になる管理費相当分を⽀払うこと(つまりマイナスの価格)で、⾏政(国・⾃治体)に引き渡すという発想だ。

実はこれに近い仕組みは23年4⽉に施⾏された相続⼟地国庫帰属法により創設されている。相続時に⼀定の管理費相当分(10年分)を⽀払うことで、不要な⼟地を国に引き渡せるというものだ。今は国の受け取り条件は厳しいが、将来緩められれば、前述の仕組みに近くなる可能性がある。

将来価値が残らないような場所に住宅を所有しようとする時には、解体費⽤に加え、そのエリアのインフラ整備・維持に必要な⾏政の追加的負担分、またその⼟地を将来⾏政に引き渡す場合の管理費相当分までを確保しておくことを義務づければ、そうした⾏動を抑制できる可能性はある。

ここまでの仕組みを設けるのは現実的ではないが、解体費⽤を確保しておく仕組みについては⼀考に値する。最近、特に解体費⽤が巨額にのぼる分譲マンションでの必要性が認識されつつある。⼀⽅、居住誘導区域といえども全域の価値が残るとは限らず、現実の仕組みとしては都市計画的⼿法と解体費⽤確保などの経済的⼿法を組み合わせて、持続的な住宅市場の構築を⽬指す⽅向性が望ましい。

解体費⽤の確保など住宅所有者の負担を増やすという⽅向性は、固定資産税を強化して空き家対策に充てる形でも実現可能だ。23年6⽉に成⽴した改正空き家対策特別措置法では、特定空き家になる前の段階(管理不全空き家)で、固定資産税の優遇(住宅⽤地特例)を解除できるようにするなど、より厳しい対応がなされることになった。こうした⽅向性を強化していくと同じようなことにはなる。

ただし、固定資産税強化により、空き家所有者に負担回避のための早期売却を促すことが都市部では可能だとしても、需要がないエリアでは売れない。解体後の固定資産税を払い続けることが難しいと考えられる場合には、⼀定の管理費相当分の⽀払いで⾏政に引き渡す仕組みの必要性が、国⼟管理上増すことになる。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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