京23区の平均価格が1億円を超えるなど、価格上昇を続ける新築分譲マンション。2024年以降のマーケットはどう推移していくのか。今回の原稿では供給サイドの予測とともに、購⼊者の志向の変化にも⽬を向けてみたい。

シニアカップル・富裕層が買い⽀え

不動産経済研究所(東京・新宿)が発表した23年10⽉の⾸都圏新築分譲マンション市場動向によると、⾸都圏の平均価格は6567万円、東京23区だと同8709万円。23区の平均価格は1 億円を超える⽉もあり、今後も都⼼6区(千代⽥、中央、港、渋⾕、新宿、⽂京)など都⼼部の価格上昇トレンドは続くと考える。

弊社の「⾸都圏新築マンション契約者動向調査」を⾒ても、世帯主の平均年齢は39.7歳で調査開始以来最も⾼い。世帯総年収も全体平均で1034万円と08年以降で最も⾼い結果となった。またシニアカップル世帯(世帯主年齢が50歳以上の夫婦のみ世帯)の購⼊⽐率も最も⾼い。

建築資材費はこの2年で2割以上上がった。世界情勢の不安定化による資源⾼と円安の影響で、⾼騰は⼀定期間続くだろう。

労務単価も年率1割弱上昇している。建設業界が労働基準法の順守を求められる「24年問題」や政府の賃上げ要請もあり、さらなる上昇はほぼ確定的だ。

⼟地も⾼騰している。特に駅近くは都⼼や郊外でも地価の上昇が⼤きいが、デベロッパーは「⽴地の希少性」があれば⾼値チャレンジできるとみており、獲得競争が激化している。

分譲マンションは1期、2期、3期と販売期を分けて販売するが、ここ数年、都⼼部や駅前の物件は期ごとに値上げしても売れている。これも⼟地を⾼値で仕⼊れる根拠になっている。

では、価格が上昇しても購買は減少しないのか。現在マンション需要を⽀えている購買者は主にパワーカップル(⾼収⼊の共働き夫婦)、貯蓄額が多く相続税対策を考えているシニア層、中国や東南アジアの富裕層、バブル後の⾼値をつけた株式を元⼿にした富裕層だ。

特に富裕層は、希少価値のある住⼾を選ぶ傾向が強い。上層階、あるいは150平⽅メートル超などのラグジュアリー物件はかなりの⾼値でも売れる状況になっている。東京都⼼の価格は世界の主要都市の価格とつながっている。世界的にはスーパーシティへの⼈⼝・資⾦集中が続くはずで、景気による多少の上げ下げはあっても⻑期的な価格上昇の流れは続くだろ う。

駅前と駅遠では別世界

⼀⽅で、郊外の中核以外の駅や、駅から徒歩15分以上離れたエリアの新築マンションでは異なった傾向が⾒られる。これらのエリアでは資産価値の上昇をにらんだ投資⽤の購⼊者はおらず、実需が中⼼だからだ。

デベロッパー側は、周辺が過去分も含めて過剰供給になっていないかも⾒極めて慎重に供給している。⾒⽴てがうまくできなかった⼀部の物件は売れ⾏きが芳しくなく、⼀部は値引きすらも出ている状況だ。

郊外ではマンションと⽐べ割安感のある分譲⼀⼾建てとの競合がある。ターミナル駅なら駅徒歩10分以内、それ以外でも駅徒歩5分以内は、強気のマンション独⾃の相場でも売れると思われるが、それ以外の⽴地は⼀⼾建ての価格動向をみる必要がある。⼀⼾建ては次回詳述するが、郊外では需給バランスが崩れ、⾼値圏から少し下がり局⾯に来ている。

ただし集合住宅のニーズは、郊外でもシニア層や2⼈暮らし世帯を中⼼に存在している。今 後、分譲マンション分野においては⼩粒の⼟地で⼩規模なマンションを増やすのが良いと考える。後述する⽊造ハイブリッド化も打ち⼿の1つだ。また⼀⼾建て同様に地域の仲介会社に広く販売を依頼するなど、「製販分離」による販路の合理化・多⾓化も検討すると良いだろう。

省エネ基準の引き上げ進む

ここからは、24年以降の新築マンションについて、主に商品としての注⽬ポイントをみていきたい。

政府は25年4⽉に、新築住宅の省エネ基準の適合を義務化する。そして遅くとも30年まで に、消費エネルギーをさらに20%削減した「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)⽔準」に省エネ基準を引き上げる。

さらに24年4⽉には省エネ性能表⽰(広告)が努⼒義務化され、リクルートの住宅情報サイト「SUUMO」などのポータルサイト上の広告でも物件の性能を表⽰するラベルが掲載される ようになる。すでに⼤⼿デベロッパーのなかには、今後建築するすべての分譲マンションのZEH化を発表した企業もある。分譲マンション業界のカーボンニュートラルへの対応は24年も進んでいくと⾒てよいだろう。

消費者サイドの意識も⾼まっている。近年の光熱費の⾼騰や夏の暑さなど、気候変動を⾝近に感じる機会が増え、物件の省エネ性能を重視する層が増えている。⾼額物件を購⼊する層は特に意識が⾼いとの現場の声も聞く。

弊社の「住宅購⼊・建築検討者調査」では、新築マンションをメインで検討した層のZEHの認知率(⾔葉も内容も知っている割合)は、20年の29.5%から22年には38.9%へと⼤きく跳ね上がった。ZEHマンションに取り組む会社が増え、広告や接客の場でうたわれること で、認知率が上昇したようだ。

そして向上したのは認知だけに留まらない。SUUMOに掲載されている物件のうち「ZEH/省エネ」という⾔葉が含まれる物件は、含まれない物件に対して1.6倍の問い合わせ効果があった。

マンションは「資産性」を重視する購⼊層が多い。30年には「ZEH⽔準」のクリアが義務化される予定ということは、それ以降、同⽔準を満たさない物件は「現⾏基準にそぐわない」ことになり、資産性にも影響する。この点が、販売戦略上も分譲マンション業界のZEH化推進の動⼒になると考えられる。

⽊造マンションにも注⽬

また⽊造マンションや、内装の⽊質化にも注⽬したい。脱炭素に向けては省エネだけではなく、⽊材の利活⽤が必要だ。⽊造はRC造と⽐べて製造時の⼆酸化炭素(CO2)排出量を4分の1程度に削減でき、⽊材利⽤により⽊が吸収したCO2を固定化できるメリットもある。伐採後に再度植林をすれば、その⽊がCO2を吸収する効果もある。

先⽇訪問したスウェーデンのストックホルムでは鉄筋コンクリート(RC)・⽊造のハイブリッドのマンションが、RC造のマンションとほぼ同じ建築コストで作られており、最近の売れ⾏きではRC造よりも好調と聞いた。

⽇本においても⽊の⾵合いを好むニーズは顕在化している。⽇本の中⾼層⽊造の建築コストはRC造と⽐べてまだ割⾼のフェーズだが、経験値を積んでいけばコスト合理化は果たせると考えている。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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