2023/12/7 5:00 ⽇本経済新聞 電⼦版

消費者物価指数(CPI)上では横ばい傾向が続いた家賃に上昇圧⼒がかかっている。東京都区部の家賃は11⽉、約9年ぶりの⾼い⽔準となった。都市部を中⼼に賃貸住宅の需要が⾼まっているほか、資⾦も流⼊。簡単に上がらないとされていた家賃が動き始めた。

「明らかに2〜3年前と⽐べ上がっている」(東京都内の不動産仲介業担当者)。都区部の、⼀般的な賃貸住宅の家賃を⽰す「⺠営家賃」は11⽉に前年同⽉⽐で0.1%上がった。全国ベースでは横ばい傾向が続くが、都区部は上昇している。

都市部の募集賃料をみるとその傾向は際⽴つ。不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)によると、東京23区の分譲マンションの家賃は8⽉以降、前年同⽉⽐11〜12%上昇した。上昇率は3カ⽉連続で2ケタ台をつけた。過去15年超遡ってもみられなかった⼤きさで、23年1〜6⽉の平均(5%台)を⼤きく上回る。⾸都圏に広げても10⽉で前年同⽉⽐8%、近 畿圏では5%の上昇率だ。

⽶国では賃貸契約において賃料が物価と連動する仕組みをとるが、⽇本はそうしたものがなく「家賃が上がるメカニズムが働いてこなかった」(⽇銀関係者)。賃貸住宅の⼊居者は借地借家法によって保護され、⼊居者が⼊れ替わるタイミングでしか家賃を上げにくい。

CPIの家賃が経年劣化を考慮に⼊れていないという技術的な要因も、統計上の家賃を押し下げる⽅向に働いてきたとされる。こうした要因で家賃は「インフレへの感応度が低い」(みずほリサーチ&テクノロジーズの太⽥智之チーフエコノミスト)傾向にあった。

その状況が変化しつつある。⾜元の募集家賃相場が急激に上がっているのは物件価格⾼騰が主因だ。国⼟交通省の不動産価格指数によると、マンション価格は上昇傾向を続け、8⽉時点で5年前と⽐べ34%上昇した。持ち家が多い⼾建ての同期間の上昇率(13%)を⼤きく上回る。

不動産開発⼤⼿の幹部は「働く⼥性が増え、⾼い家賃を払っても職住接近で住む⼈が増えている」と指摘する。物件価格の上昇により「住宅購⼊に⼿が出ず、賃貸に流れる動きが起きている」(⽇銀関係者)。⽇銀がマイナス⾦利を解除し、変動型の住宅ローン⾦利が上昇すれば購⼊コストはさらに上がる。

地銀の積極融資や投資マネーの流⼊も賃貸シフトを後押しする。⾦融機関は低⾦利に伴う運⽤難で、⼤企業向け融資などより収益を上げやすい不動産向け融資を増やしてきた。

⽇銀の⾦融システムリポートによると、異次元緩和下にある17年以降、不動産賃貸業向けの地銀の貸出残⾼は右肩上がりで増加した。23年6⽉末時点では前年同⽉⽐1.8%増と、4年ぶりの⾼い伸び率をつけ、増加に拍⾞がかかっている。不動産ファンド向けの融資も増えている。

国⼟交通省の住宅着⼯統計によると新設住宅着⼯⼾数は4〜10⽉で前年同期⽐6.2%減の約48 万7000⼾だった。減少の主因は持ち家向けで、貸家向けは同0.5%減とほぼ横ばいだ。⼈⼝ 減で住宅需要が先細るなかでも、貸家の着⼯動向は底堅さを保つ。

都⼼部で賃貸需要が過熱しても、郊外では空室が⽬⽴ち全国ベースでは家賃が上がらないというのがこれまでの状況だった。現状の動きについてみずほリサーチの太⽥⽒は「都⼼部の家賃急上昇が地⽅に波及する可能性はある」と指摘する。

⽶国では中古住宅の物件が資材価格や⼈件費の上昇で⾼騰した。⽶連邦準備理事会(FRB) の利上げにともない住宅ローン⾦利も上昇し、住宅購⼊を⾒送り賃貸に流れる動きが起きている。⽶国の家賃はCPIベースで10⽉も前年同⽉⽐7%台と⾼⽔準が続き、サービス価格が⾼⽌まりしている⼀因となっている。⽇本でも家賃の上昇が続けば、物価上昇の新たなライバーとなる可能性がある。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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