相続空き家、管理⽋かせず特例対象縮⼩で税負担増も

2023/4/22付  ⽇本経済新聞  朝刊

「税⾦がこれ以上増えるのは耐えられない」。東京都に住む会社員Aさん(62)は3年前に相続し、空き家となった実家についてこう話す。いまの国会に提出された空き家対策特別措置法改正案に、管理が不⼗分な物件は住宅の固定資産税などを減らす特例から外す条⽂が⼊っているからだ。


実家は千葉県にあり、⼀⼈暮らしだった⺟が亡くなったのを機に引き継いだ。最寄り駅から徒歩で30分以上かかるほか家屋も古く、貸したり売却したりできる⾒通しはない。相続当初は3カ⽉に⼀度のペースで家の状態を確認していたが、最近は⾜が遠のいている。家屋と⼟地の税額は現在、固定資産税と都市計画税の合計で年6万7000円。負担増を避けるため「今後はこまめに管理するようにしたい」という。

空き家は全国で増えている。総務省が5年ごとに実施する「住宅・⼟地統計調査」によると2018年に約849万⼾と1998年の約1.5倍に増え、住宅総数に占める割合は13.6%と過去最⾼ だった。おおむね7⼾に1⼾に当たる計算になる。Aさんのように相続した家に誰も住まず、空き家になるケースが多い。

空き家が管理されず⻑期間放置されると景観の悪化だけでなく、家屋が倒壊したりゴミの不法投棄を招いたりしやすい。政府が提出した改正案はこうした空き家問題に⻭⽌めを掛けるため、所有者に適切な管理を促すことを⽬指している。6⽉までの今通常国会で成⽴すれば公布を経て、早ければ年内にも施⾏する⾒通しだ。

改正案の⼤きな柱が空き家の区分にこれまでの「特定空き家」に加えて「管理不全空き家」を新たに設けること。特定空き家は家屋に倒壊など保安上危険な恐れがあったり、著しく衛

⽣上有害となる恐れがあったりする場合に市区町村が指定する。指定を受けた所有者が⾃治体の改善指導・勧告に従わなければ、住宅⽤地に適⽤する税軽減特例の対象から外す仕組みとなっている。改正案はこれを管理不全空き家にも広げ、「所有者にとっては税負担が増すことになる」(税理⼠の藤曲武美⽒)。

具体的には⼟地200平⽅メートル以下の部分について固定資産税は課税上の評価額を6分の1 に、原則として市街化区域でかかる都市計画税は3分の1とする特例が受けられなくなる。実際にどれくらいの税額になるかは様々だが、4倍程度になるケースが多いとみられる。冒頭のAさんも税理⼠に相談したところ、年約25万円と3.7倍になる計算だったという。

ではどんな空き家が管理不全に指定されるのか。改正案では倒壊の危険などは現在ないが、放置すれば特定空き家になるおそれのある物件としている。例えば適切に管理されず、窓や屋根の⼀部に破損があったり、外壁の⼀部がはがれていたりすると該当する可能性がありそうだ。法案成⽴後に政府が⽰すとみられるガイドラインを参考にするといいだろう。

改正案は特定空き家でも取り組みを強化する。家屋が著しく危険な状態にある場合などに⾃治体が強制撤去する「⾏政代執⾏」という仕組みに緊急時の代執⾏制度を設ける。通常の⾏政代執⾏は所有者が撤去や除却の命令に従わない場合に適⽤するが、命令などを⼀部省略できるようにする。地震や台⾵で家屋の損壊が進むなど緊急性が⾼い場合を想定し、費⽤は所有者の負担となる。

今回の改正案以外にも、⾃治体が空き家に独⾃の税負担を課す例が出ている。京都市は2026 年以降に「空き家新税」を導⼊する予定だ。市街化区域内にある空き家の所有者が課税対象で、税額は家屋の固定資産税評価額などを基に決まる。空き家問題が深刻になっているため、ほかの⾃治体に波及する可能性はありそうだ。

空き家の所有者はどうすればいいのか。まずは「管理不全空き家」や「特定空き家」に指定されないよう適切な管理を続けることが⼤切だ。家屋の掃除、経年劣化や⾃然災害による破損の修繕だけでなく、庭の除草や樹⽊のせん定もこまめにすることが必要。庭が荒れると周囲に迷惑を掛けかねないためだ。修繕費や掃除などの際に利⽤する⽔道光熱費、万⼀に備える⽕災保険料などが発⽣する。

家の売却を視野に⼊れるなら、家屋の解体・撤去費を⾒込みたい。「古い家屋があると売却が難航しやすい」(司法書⼠の船橋幹男⽒)からだ。税負担も含めたこうした費⽤をどう賄うかを考えておこう。相続⼈が複数いる場合は分担するのも選択肢になる。

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