2023/5/9付 日本経済新聞

国内ホテルの客室単価が上がっている。特に⾼価格帯の上昇が⽬⽴ち、新型コロナウイルス  禍前に⽐べ3割⾼い。「リベンジ消費」の意欲が観光に表れ、宿泊需要が⾼まっていることが⼀因だ。

4⽉末には⽔際対策が終了しインバウンド(訪⽇外国⼈)が⼀段と増加する⾒通し。感染症法上の分類が「5類」に移⾏する国内でも⾼級ホテルに泊まって楽しむ層が広がっていることが背景にありそうだ。

「『ラグジュアリーホテル』はインバウンドの需要を取り込んでいる。コロナ禍前は10万円程度だった部屋が、現在は20万円でも泊まれないことがある」。CCCマーケティング総合研究所(東京・渋⾕)の新橋実所⻑はこう話す。

ラグジュアリーホテルは各ホテルブランドの中で最⾼ランクに位置づけられている。⽶マリオット・インターナショナルの「ザ・リッツ・カールトン」や同ハイアット・ホテルズ・コーポレーションの「パークハイアット」が⼀例だ。

ホテル専⾨の⽶調査会社STRによると、⾼価格帯と位置づける客室の平均単価は2023年3⽉は3万4533円だった。19年3⽉の2万6364円から3割⾼くなった。中価格帯の同17%⾼、低価格帯の同5%⾼と⽐べると⾼価格帯の上昇が際⽴つ。

パレスホテル東京(東京・千代⽥)では、平均客室単価はコロナ禍前は6万〜7万円程度だったが、3⽉は10万円を超え同ホテルとしては過去最⾼となった。4⽉も上昇基調が続き、5⽉もコロナ禍前を⼤きく上回りそうという。

ホテル業界はコロナ禍による⼈流停滞が直撃した。ホテルの客室単価は需給や周辺エリアの相場によって変わるが、STRの桜井詩織マネージャーは「収⼊を維持するために、⾼価格帯のホテルと中・低価格帯のホテルで戦略の違いが出た」と背景を話す。

コロナ下では、⾼価格帯のホテルは客室単価の維持を選んだ。⼀⽅、中・低価格帯は稼働を重視して単価を下げる戦略が⽬⽴ち、平均単価は⼀時は19年の半分程度まで下がった。⾼価格帯は下げ幅が⼩さかった分、コロナ禍前を⼤きく上回る結果になった。

STRによると、23年3⽉の稼働率はすべての価格帯の客室で8割程度だったという。⽔際対策の緩和で旅⾏需要が⾼まり、稼働率が上昇。単価を引き上げる動きにつながった。「外資系ホテルが多い⾼価格帯はインバウンド増加の恩恵を受けやすい」(桜井⽒)という。

「久しぶりの海外旅⾏で初めて⽇本にきている⼈たちが多いようだ」とCCCマーケティング総合研究所の新橋⽒は話す。国内では海外旅⾏の代わりにラグジュアリーホテルに泊まって楽しむ家族層もいるという。

メトロエンジン(東京・品川)によると、インバウンドが多く訪れる京都府内で、10万円を超える価格で販売した実績のある施設数は、19年3⽉は全体の18.8%だった。23年3⽉は 26.8%まで増えている。東京都でも8.3%から16.7%に増えた。

⼈件費や電気代などの上昇といったコスト増の影響は⼤きい。加えて「需要拡⼤を追い⾵ に、コロナ下で耐え忍んだ分を取り戻そうと積極的な価格設定をしている」と明かす関係者もいる。

ホテルからは「20〜22年の価格が低すぎた」との声も出る。⼀⽅、⼈⼿不⾜で稼働率を上げにくく、客室の供給制約も懸念されている。CCCマーケティング総合研究所の新橋⽒も「今の価格決定は決して強気ではない」とみる。

ただ、このまま価格の上昇が続けば、消費者が離れかねない。帝京⼤学の吉村久夫教授は「富裕層は湯⽔のようにお⾦を使うわけではない。価値を認めたサービスに出費をおしまないだけ」と話す。

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