マンションや⼾建て住宅の価格はここ⼗数年で値上がりが続いていますが、いつ価格上昇トレンドが転換するかという声が聞かれる中、値下がりしにくい物件として、最寄り駅から近い「駅近物件」を狙っている⽅は多いようです。今回は⾸都圏にある住宅の成約データを使って、本当に駅近物件は値下がりしにくいのか調べてみました。

「駅近物件」は実際に値下がりしにくい

東京駅から半径35キロメートルの範囲内で2019〜22年に取引された中古マンションと⼾建て住宅のデータを使い、築年数ごとに建物⾯積1平⽅メートル当たりの平均単価を算出し、築35年までの推移をグラフ化しました。築1年の価格を1倍として、値下がりで価格が何倍になったかを追っています。

マンションは最寄り駅からの徒歩分数が7分以内と7分超、⼾建て住宅は12分以内と12分超(またはバス便)に分けて分析します。築年数ごとの平均単価なので、その時々で成約した物件の⽴地のばらつきや建物のグレードといった品質は加味されていませんが、築年数の違いによる相対的な価格差をある程度つかむことができます。

建物価格が「ゼロ」と評価後、価格が横ばいに

マンションも⼾建て住宅も築年数の経過とともに価格が下がっていますが、マンションは築30年程度、⼾建て住宅は築32年程度で横ばい傾向となっています。築35年以降、マンション価格が上昇しているのは、リフォーム済中古マンションの成約割合が増えていることが理由だと考えられます。また、⼾建て住宅の価格が乱⾼下しているのは、リフォーム済中古⼾建てだけでなく買い主が解体を⾏う前提で購⼊した⼾建て住宅が含まれることなどが理由と考えられます。

こうしてみると、マンションは築30年程度で、⼾建て住宅は32年程度で建物価値がゼロと市場から評価され、⼟地の価値のみが評価された結果として横ばいとなると考えられます。なお、マンションのほうが新築当初からの値下がり率が⾼いのは、⼟地価格の割合が⼾建て住宅に⽐べて少なく、建物価値の経年による減少が⼤きく影響していることが理由でしょう。

築20年の中古マンションは「駅近」の影響なし
上記のグラフは新築間もない時からの相対的な価格推移を表していますので、築20年を起点
とした場合のグラフを作ってみました。築20年の中古住宅を購入した場合、購入時の価格に比べて、その後にどのように価格が変動するのかがわかります。

⼾建て住宅は駅近物件のほうが値下がり率は低くなっています。⼀⽅、マンションについては駅近かどうかに関係なくほぼ同じような値下がりを⾒せています。ただし、リフォーム済物件が成約事例に多く含まれると思われる築35年以降を⾒ると駅近物件のほうが値上がり率は⾼くなっていますので、リフォーム等で室内の価値を上げるならば駅近物件のほうが評価は⾼まると考えてもよさそうです。中古マンションの値下がり率に違いが⾒られないのは、マンションが⼾建て住宅と違って建て替えを想定しにくいため、駅近物件の⼟地評価がストレートに反映されにくいということが原因の⼀つではないかと筆者は考えています。

値下がりしにくいメリットは売却前提

値下がりしにくいというメリットを享受するためには、住まいを売らなければ実現しませ ん。⼾建て住宅の場合、新築で買っても中古で買っても、駅近物件のほうが⾼く売れる可能性が⾼いことがわかりましたが、中古マンションを購⼊した場合はリフォームを施したうえでないと⾼く売れない可能性があります。値下がりしにくいというメリットを享受するためには、将来売却する計画がある前提でないと実現しないということも理解しておく必要があります。