実家の相続、早めに解決分割協議に期限/登記義務化

2023/4/8付  ⽇本経済新聞  朝刊

政府が所有者不明⼟地対策と位置付ける3本柱が4⽉から本格的に動き出した。相続⼈が財産の分け⽅を話し合う遺産分割協議に10年の期間を設ける改正⺠法が1⽇に施⾏されたのに続き、不要な⼟地を国が引き取る「相続⼟地国庫帰属制度」は27⽇から始動。⼟地・建物の登記を義務付ける改正不動産登記法の施⾏も2024年4⽉に迫 る。遺産分けに⼤きな影響を与えるため、関連法のポイントを押さえておこう。

「親の家や⼟地を相続するのか、それとも処分するのかなどを早めに決めたほうがいいですよ」。司法書⼠の船橋幹男⽒は相続の相談に訪れる⼈にこう助⾔することが増えた。決めないままでいると所有者不明⼟地対策の実施を受けて遺産の分け⽅で不利になったり、思わぬ費⽤負担を迫られたりしかねないためだ。

所有者不明⼟地とは不動産登記簿をみても誰が持ち主なのか分からない⼟地のこと。被相続⼈が亡くなって相続が発⽣したとき相続⼈が名義変更をせず、⻑期にわたって放置することで発⽣する。

学識経験者などで構成する「所有者不明⼟地問題研究会」の推計によると、全国の所有者不明⼟地の⾯積は16年時点で410万ヘクタールと九州の⾯積を上回る。40年には720万ヘクタールになる⾒通しだ。都市再開発や公共 事業で⼟地の買収に時間がかかったり、廃棄物の不法投棄が発⽣したりするといった問題が深刻になっているため、政府は⺠法改正などに踏み切った。

対策の第1の柱は遺産分割協議に10年の期間を設定すること。相続開始から10年過ぎても分割協議がまとまらなければ、原則として法定相続割合で分割する。法定相続割合は⺠法で定めた財産の分け⽅で、例えば相続⼈が配偶者と⼦1⼈なら2分の1ずつ。配偶者と⼦2⼈なら配偶者が2分の1、⼦は4分の1ずつとなっている。

亡くなった⼈の遺⾔がない場合、相続⼈は話し合いで「誰が、どの財産を、どれだけ引き継ぐか」を決める。財産は法定相続分で分けてもいいし、相続⼈全員が合意すれば法定相続分とは異なる分け⽅でも構わない。ただし分割協議は分け⽅を巡って相続⼈同⼠が対⽴し、まとまらないことが少なくない。

特に難航しやすいのが相続⼈のなかに故⼈から⽣前に財産を贈与されていたり、介護などで故⼈に多⼤な貢献をしたりした⼈がいるケースだ。それぞれ特別受益と寄与分といい、分割協議がもめる要因になりやすい。遺産を単純に法定相続割合で分けると不公平になりかねないためだ。

特別受益や寄与分を踏まえて決めるのがより公平な分け⽅になるが「⽣前贈与の内容の把握や寄与分の認定と⾦額の算定に⼿間取り、協議は⻑引くことが多い」(司法書⼠の三河尻和夫⽒)。相続開始から10年過ぎた場合は特別受益や寄与分を認めず、法定相続割合で分けるようにすることで、政府は所有者不明⼟地の発⽣に⼀定の⻭

⽌めがかかるとみている。半⾯、相続⼈は希望しなくても法定相続分で分けることになる。

第2の柱は相続した⼟地・建物の登記を義務化すること。施⾏後は相続発⽣から3年以内に所有名義を故⼈から相続⼈に変更する必要がある。既に相続が発⽣している場合は27年3⽉末が期限だ。いずれも登記しなければ、10 万円以下の過料になる場合がある。

現在は任意で、変更⼿続きの期限もないため登記をしないケースが⽬⽴つ。登録免許税や司法書⼠への報酬といった登記費⽤の負担をしたくないとして怠る場合もあり、所有者不明⼟地の⼀因となっている。

協議が難航するなどして登記期限に間に合わない場合は、同時に新設する相続⼈申告登記制度を利⽤する⽅法がある。相続⼈の住所、⽒名などを申し出れば、3年が過ぎても過料の対象にならない。登録免許税も⾮課税だ。

法定相続割合での分割を避けたいなら、10年の期限内に相続⼈同⼠で折り合う必要がある。ただ期限内に家庭裁判所に調停・審判の申し⽴てをすれば、10年経過後も法定相続分以外の分割は可能。また期限が過ぎた段階で相続⼈同⼠が協議を進めて全員が合意すれば、特別受益などを考慮した分け⽅にすることができる。

 相続する⼟地が売ったり貸したりすることが難しかったり、相続⼈の誰も引き継ぐ意思がなかったりする場合 は、第3の柱である相続⼟地国庫帰属制度の利⽤が選択肢だ。引き取ってもらう⼟地は多くの条件を満たす必要がある。

条件は利⽤申請時と法務局による審査時の2段階があり、それぞれ5つある。まず申請時は建物があると申請を受け付けてもらえない。解体・撤去する必要があり、費⽤は⾃⼰負担だ。担保権が設定されていたり、隣地との境界が不明確で争いがあったりする場合も却下される。審査段階では⼟地に庭⽊を含む樹⽊や⽯灯籠などの⼯作物があったり、除去が必要なコンクリート⽚などが埋まっていたりすると認められない。地割れや陥没がある場合も承認しない。

引き取りが決まったら、申請者は管理費相当額として⼀定の負担⾦を納める。具体的には宅地、農地、森林といった⼟地の種類や⾯積ごとに決める。例えば都市計画法の市街化区域にある宅地で⾯積が「100平⽅メートル超200平⽅メートル以下」なら「⾯積×2450円+30万3000円」で算出する。市街化区域外にある宅地の負担⾦は⾯積にかかわらず⼀律20万円となっている。

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