2023/9/25 5:00   ⽇本経済新聞    電⼦版

中古住宅を購⼊する際、現地を⾒学してみて気に⼊った物件があれば「購⼊申込書」に購⼊希望⾦額などを記載し署名捺印(なついん)をします。これによって売り主との売買契約交渉に⼊り、双⽅が合意する条件になれば売買契約を結んでめでたく購⼊に⾄るということになります。

ところが、購⼊申込書を提出してから1週間ほど経過したところで、購⼊予定者からキャンセルの連絡を受けることがあります。せっかく気に⼊った物件が⾒つかったのに、いざ契約交渉の直前になって、購⼊をやめる事態になってしまうのです。なぜこのようなことが起こるのでしょうか︖

「本当にこの家でいいのか︖」

購⼊申込書は、その物件を買うという意思を明確に売り主に⽰す書類です。売買契約とは違い、サインして捺印しても法的な効⼒はありませんので、キャンセルしても問題はありません。購⼊申込⾦を払った場合は返⾦されます。

しかし、キャンセルするには少なからずエネルギーが要ります。契約のための準備に取り掛かっている売り主と不動産業者に迷惑がかかってしまうからです。売り主が広告を出している場合は他の⼈への案内を⽌めることもあり、売り主にとっては他の購⼊希望者を⾒つける販売期間を奪われることにもなります。キャンセルを繰り返すと「信頼されない顧客」と⾒なされ、本気で買いたい物件が出てきても⼿続きがなかなか進まない事態にもなり得ます。

キャンセルの理由は様々ですが「本当にこの物件でよいのか不安になった」「配偶者が購⼊に反対している」「住宅取得のための資⾦を⼀部援助してくれる親が反対している」など と、購⼊の話が具体化して改めて家族の思いがばらばらだったことに気づくケースもあります。

なぜ今か、どんな暮らしをしたいのか

「キャンセルしたいがどうしたらよいか」と筆者に相談に来る⼈の話を聞くと、⼀つの共通点があります。それは「なぜ今、購⼊するのか︖」「どんな暮らしがしたいのか︖」という住まい購⼊の⽬的が定まっていないということです。そして、その考えを共有すべき⼈と共有していないのです。

住まい購⼊の⽬的は⼈それぞれですし、模範解答があるというものではありません。しか し、これがほとんど固まっていないのに、不動産営業担当者にセールスされるがままに、ついつい判⼦を押してしまうというのは、後悔することになりかねません。

家族で住まい探しの考えを整理し共有

では、どうすればよいでしょうか。筆者のお客様に、とてもよいやり⽅をしていたご夫婦がいらっしゃいますので、そのやり⽅をご紹介しましょう。それは、物件⾒学をするたびに

「なぜ今、購⼊するのか」「そこでどんな暮らしをしたいか」について整理するというものです。

彼らは、毎週の⼟⽇に物件⾒学を1カ⽉ほど続ける中で、現在の暮らしの問題点は何か、問題点を改善できる⽴地や建物の特性はどんな条件か、資⾦計画など経済⾯での実現可能性、⼦育ての⾒通し、買い替えのタイミング――といった点について考えながら、次のような整理 をしていました。

・現状は、利便性はとても良いものの古い鉄⾻賃貸アパートで暮らしている

・今の住まいの悩みは、夏は暑いし冬は寒く、結露によるカビが出ること。近いうちに⼦供を作りたいと思っているので、出来るかぎり早いうちに断熱性が今よりよい環境の住宅に住みたい

・現在の家賃の1.5倍程度の⾦額は住宅費として⽀出可能なので、同額程度の元利払いとなる固定⾦利の住宅ローンを組んで、住宅を取得してもよい

・新しい家に求める条件は、⼦供ができても共働きを続ける予定であるため、保育施設や学童制度が充実した⽴地、かつ通勤に便利な⽴地がよい

・もう⼀つの条件は、⼦供が中学に⼊学するころには住み替える可能性もあるので、将来も売りやすい物件がよい


彼らは1カ⽉間の物件⾒学の中で「どんな暮らしをしたいか︖」についても、2⼈で⾒学するたびに、そこで暮らしている⾃分たち家族の姿を想像しながら話し合ったそうです。平⽇、休⽇、朝、晩、5年後、10年後の暮らしぶりまで想像していたそうです。「漠然と物件を⾒学するのではなく、そこで暮らしている⾃分たちの姿を想像できるかが重要だった」と⾔っていました。

不動産営業担当者と積極的に会話を

これほど具体的に考え抜いて、新しい家への思いを家族で共有していれば、購⼊申し込み後にモヤモヤしてキャンセルするようなことにはならないでしょう。結果として、希望する物件をスムーズに購⼊できます。

不動産営業担当者の仕事は、買い主に寄り添いながら、「なぜ今、購⼊するのか︖」「どんな暮らしがしたいのか︖」を買い主から引き出すことだと⾔うプロフェッショナルもいま す。漠然と物件⾒学をするだけでなく、不動産営業担当者と積極的に会話しながら物件⾒学をしてみるとよいと思います。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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