2024/2/5 11:51  ⽇本経済新聞  電⼦版

海外の投資ファンドや企業による2023年の国内不動産投資額は前年⽐3割減り、5年ぶりの低⽔準となった。⽇銀の政策修正で⾦利が上昇すれば、不動産の投資収益が下がる可能性があるとして新規投資を控えた。海外勢は保有物件の売却を増やし、取引額は4年ぶりに売り越しに転じた。

不動産サービス⼤⼿CBREによると、23年の海外投資家の投資額は約1兆円だった。半⾯、売却額は前年⽐2倍の約1兆3700億円で、差し引き約3700億円の売り越しだった。売越額としては18年の約5000億円以来の⽔準だ。

23年には海外ファンドによる⼤型物件の売却が⽬⽴った。シンガポール政府系ファンド、メープルツリー・インベストメンツは⼤阪市の商業ビルを家電量販⼤⼿エディオンに約540億円で売却した。同ビルは19年完成で、エディオンの旗艦店「なんば本店」が⼊居している。

⽶ファンドのフォートレス・インベストメント・グループは沖縄県⽯垣市のリゾートホテルを系列の不動産投資信託(REIT)に約400億円で売却した。フォートレスは12年に別の⽶ファンドから取得し、改装や増築で収益⼒を⾼めてきた。⼀時は新型コロナウイルス禍で客数が落ち込んだが、回復基調に転じたタイミングで売却を決めた。

海外勢の物件売却が増えた背景に⽇銀の政策修正がある。今後、⾦利上昇が本格化すれば不動産購⼊時の借り⼊れコストが上がり、投資リターンが下がる懸念がある。不動産市況のピークが近いとみて、⻑年保有する物件を中⼼に利益確定の売りを出した。

理由のもう⼀つが海外の不動産不況だ。⾦利上昇や在宅勤務の定着で欧⽶のオフィスビルの価格が急落し、相対的に堅調な⽇本の物件を売って埋め合わせようとしている。シンガポール政府系ファンドのGICは23年に東京・汐留の超⾼層オフィスビルの売却⼿続きに着⼿した。GICは海外の⾦利⾼の影響で運⽤成績が悪化していた。

海外勢も売り⼀辺倒ではなく、⽇本市場での実績が少ない企業やファンドは買いが⽬⽴った。シンガポール不動産⼤⼿シティ・デベロップメンツ(CDL)はカナダ系ファンドのベントール・グリーンオークから、東京都内の賃貸マンション25棟を約350億円で取得した。CDLが東京の複数のマンションを⼀括購⼊するのは初となる。

もっとも、海外勢の新規投資は23年後半にかけて減速し、特に10〜12⽉の投資額は前年同期⽐8割減った。CBREの⽻仁千夏シニアディレクターは「⾦利上昇への警戒から、価格を巡る売り⼿と買い⼿の⽬線が合いにくくなっている」と話す。

これまで相場のけん引役だった海外勢の投資意欲が薄れたことで、国内市場全体も減速した。23年の取引額は3%減の約3兆8000億円で、3年連続で前年実績を下回った。海外投資家が占める割合は22年まで3年連続で3割台だったが、23年は26%に下がった。

物件タイプ別ではオフィスビルの取引額が4割減の約1兆800億円で、12年以来の低⽔準だった。在宅勤務の定着や新しいビルの相次ぐ完成で賃貸市場の需給が緩んでおり、投資対象としての⼈気が落ちている。

24年に⼊っても海外投資家の物件売却は続く。GICは福岡市の⼤型ホテル「ヒルトン福岡シーホーク」の売却⼊札を進めている。もともとダイエー傘下で1995年に開業したが、⽶投資会社を経て07年にGICが取得した。

GIC側の想定売却額は900億円程度とみられる。ただ⼊札参加者からは「築年数が⻑く、取得後の改装費⽤が多くかかる⾒込みで、強気の価格を提⽰しにくい」(海外ファンド)との声が上がり、取引が成⽴するか不透明となっている。

海外勢の慎重姿勢が影響し、全体の取引⾦額は24年も減少基調が続く可能性がある。

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