2024/4/20 5:00 日本経済新聞 電子版

「地価の上昇が全国的に広がっているようね」「東京都心のマンションは手が届かなくなってきたようだよ。地方も人口が減って空き家が増えているのに、このまま上がり続けるのかな」

地価の動向について名瀬加奈さんと日比学くんが斉藤徹弥編集委員に聞きました。

名瀬さん「地価の上昇が広がっているようですね」
国土交通省がまとめた1月1日時点の公示地価は、全体の平均で前年比2.3%の上昇でした。
上昇は3年連続で、上昇率も2年前の0.6%、昨年の1.6%から拡大しました。三大都市圏は2年前から上昇地点数が下落地点数を上回っていましたが、今年は地方圏でも上昇地点の方が多くなりました。都道府県単位でみると、昨年は上昇と下落がほぼ同数でしたが、今年は上昇が3分の2近くになっています。


三大都市圏や札幌、福岡では再開発が相次ぎ、海外の不動産マネーが流入しています。都心のマンション価格は高止まりし、購入層は海外の富裕層や所得の高いパワーカップルが目立つようです。
新型コロナウイルス禍の収束で人口の東京集中が再び加速し、首都圏の住宅需要は旺盛です。都心マンションは高すぎると感じる人や、テレワークで毎日通勤する必要のない人は、東京近郊の千葉や埼玉に広い住宅を求め、そうした地域も上昇しています。

日比くん「景気の回復が背景ですか」
キーワードはインバウンド(訪日外国人)と、経済安全保障で重視される半導体です。コロナ禍の収束で訪日客が戻り、リゾート地の人気が高まっているほか、半導体の大規模工場が立地する地域で高い上昇率が目立ちます。

北海道富良野市は外国人に人気のリゾート地で、上昇率は27.9%と全国の住宅地でトップです。沖縄県宮古島市、長野県白馬村なども上位です。商業地の上昇率1、2位は、台湾積体電路製造(TSMC)の半導体工場城下町の熊本県大津町と菊陽町でした。ラピダスの半導体工場建設が進む北海道千歳市も、住宅地で全国の上昇率上位10位までに4地点、同様に商業地も3地点が入っています。

名瀬さん「地方は人口減少が進んでいるのでは」
地方では県庁所在地などの中心部が上昇しています。高齢化が進み、車を使わなくても生活できるような市街地のマンション需要が根強いためです。県都で地価下落が続くのは、住宅地が6市、商業地は2市だけになりました。

同じ県内でも、県都への一極集中が進む一方で周辺部は地価の下落が続き、二極化が鮮明になっています。人口減少下では、ある程度まとまって住むのはインフラ維持などの点で望ましいといえます。中心部の地価上昇で生まれる税収をもとに、周辺部の空き家や土地を管理していくことが大切でしょう。

日比くん「株価はバブル期の水準を超えました。地価もバブル期に近づきますか」
上昇が続いているとはいえ、地価はまだバブル期の半分ほどの水準です。バブル期は地方も上昇しましたが、今は収益の高い案件に投資を集中させる選別投資が主流です。人口減少で土地が余る時代でもあり、バブル期ほど高騰する環境にありません。
ただ東京都心では割高な投資もみられるようになってきました。地方で旺盛な賃貸住宅向け投資は収益が悪化し始めました。過熱感に注意が必要でしょう。

東京に世界から資金が集まるのは、円安もあって各国の主要都市と比べ不動産価格が安いためです。低金利で資金調達コストも低く、安定して高い利益が得られるとみているのでしょう。

金利のある世界になれば、資金調達コストが上がり、収益性も悪化しかねません。株価上昇で株式の方が収益性がよいとなれば、資金がシフトするかもしれません。

■ちょっとウンチク 自治体の持続性にも影響

土地はその評価額に応じて、所有者が市町村に固定資産税を納める。評価額は市町村が算し、宅地は公示地価の7割が目安。評価額をもとにした課税標準額に原則1.4%を掛けた額が税額となる。

市町村にとって、固定資産税は税収全体の約4割を占める主要財源だ。とりわけ町村では税収の5割にも達する。人口減少で住民税は先行き減収が見込まれる。このため、市町村財政は固定資産税に頼る傾向を強めそうだ。地価の上がる街づくりこそ、自治体の持続性を高めることにつながるだろう。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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