2024/4/18 14:59 (2024/4/18 17:38更新) 日本経済新聞 電子版

東京都内の新築マンション価格が高騰している。不動産経済研究所(東京・新宿)が18日発表した2023年度の平均価格(23区内)は前年度比5.7%高の1億464万円と年度ベースで初めて1億円を突破した。夫婦で稼ぐ「パワーカップル」など実需がけん引しているが、低金利や価格上昇を前提とした「背伸び買い」には危うさも残る。

年度の平均価格はデータが取れる90年度以降で過去最高を更新した。1月発表の23年暦年の平均価格もデータを遡れる1974年以降で初の1億円超えを記録しており価格の上昇が鮮明だ。

都心周辺でも億ション
今回、池袋や新宿のほか、月島などの再開発物件が押し上げた。三井不動産が分譲する「三田ガーデンヒルズ」(東京・港)など都心の超高額物件も販売が堅調だった。

究所の松田忠司上席主任研究員は「高額物件の販売は堅調で、強気な値付けができる状態だ」と話す。

価格上昇は都心周辺の地域にも波及する。通勤など利便性の高さから都内北部や東部などのエリアでも「億ション」が建設されている。東急不動産が手掛ける「ザ・タワー十条」(東京・北)や野村不動産の「プラウドシティ小竹向原」(東京・板橋)など、3LDKで1億円を超える部屋が次々と誕生した。

足元でマンション相場を押し上げているのは実需だ。業界では「都内の物件価格は底堅い」との意見が大勢を占める。23区内のマンション供給数が限られているからだ。リクルートの柿崎隆SUUMO副編集長は「(新築)マンションの供給戸数は(かつてに比べて)大きく減少したまま推移していることもあり、需要が供給を上回る状況が当面続く」と予測する。


専有面積は縮小傾向
もっとも過度な価格上昇は購入者に二の足を踏ませる。デベロッパー各社は専有面積を狭くするなどの対策で価格を抑える努力を続ける。不動産経済研究所によると、23年に販売された首都圏の新築マンションの1戸あたり専有面積の中央値は68.42平方メートルで、4年連続で前年実績を下回った。
それでも販売価格の抑制は限界に近い。マンション建設最大手長谷工コーポレーションの池上一夫社長は「土地代も建築費も高止まりしており、当面下がる傾向はみられない」と明かす。
こうした状況下、大手デベは利幅が見込める都内の高額物件へのシフトを進めてきた。


「パワーカップル」健在
新築マンション相場の押し上げ要因は大きく3つに分類できる。真っ先に挙げられるのが低金利だ。日銀の金融緩和と銀行の住宅ローン競争により、変動金利型で貸出期間の長い商品は利率が大きく下落、ネット銀行では0.2%台も珍しくなくなった。住宅金融支援機構が23年4〜9月に住宅ローンを借りた人向けに実施した調査では、変動型の金利を選択したのは74.5%と、過去最多を更新。3年前から10ポイント以上増加している。

2つ目の要素が、夫婦共働きでローンを組むパワーカップルの増加だ。住宅ローン比較診断サービスの「モゲチェック」を運営するMFS(東京・千代田)によると、同社顧客のうち、ペアローン利用者の比率は約2割にのぼる。同社の塩沢崇取締役は「特にこの1〜2年で1.5倍に増えている」という。

野村不動産が同社のマンション「プラウド」を購入した顧客向けの調査では、共働き世帯における世帯年収1500万円超の比率は23年の時点で37.4%と、過去8年で約2倍に増えた。「2馬力でないと買えない相場になりつつある」(塩沢氏)

3番目は資産価値の先高観だ。リクルートの「首都圏新築マンション契約者動向調査」によると、住宅購入を思い立った理由として「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」を選んだ人は32%と、01年の調査開始以来、最高を記録した。マンション価格が右肩上がりで上昇する中、都内の利便性が高い立地のマンションを「安全資産」として捉え、購入するパターンが増えている。

ローン「年収の7倍」も
だが、市場環境の変化というリスクは残る。住信SBIネット銀行は17日、変動型住宅ローン金利の基準となる短期プライムレート(短プラ)を0.1%引き上げると発表した。日銀がマイナス金利政策を解除したことで、低金利というマンション相場の大前提が崩れる可能性が出てきた。

住宅価格が年収の何倍にあたるかを示す「年収倍率」は、業界の目安として世帯年収で6倍程度とされる。塩沢氏は「若年層ほど倍率は高く、20代だと7倍超でローンを組む人も多い」と分析する。金利上昇はこうした層を直撃しかねない。
新築マンションが高根の花となりつつあるなか、中間層の目線は中古マンションに向かう。リクルートの調査では、中古マンションとの並行検討者は53%と、過去20年で20ポイント近く増えている。この潮流を捉えるべく大手デベも動く。住友不動産は中古マンションのリノベーション事業に力を入れている。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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