2023/12/2 5:00 ⽇本経済新聞  電⼦版

住宅ローン残⾼が膨らんでいる。減税などの影響で返済を急がない傾向が強まったためだ。
⼀⾒すると合理的な動きだが、過度な借り⼊れや返済の遅れは⽼後などに響く恐れもある。

歴史的な低⾦利で頭⾦少なく

住宅⾦融⽀援機構の調査によると、住宅ローン残⾼は2022年度に約216兆円と過去最多を記録した。なぜ、ここまで増えたのか。

住宅ローン相談サービス「モゲチェック」を運営するMFS(東京・千代⽥)取締役の塩沢崇さんは「主因は住宅価格の⾼騰だ」と話す。不動産経済研究所(東京・新宿)によると、東京23区の新築マンション平均価格が23年1〜6⽉で1億円を超えるなど、住宅価格は急ピッチで上昇している。この⾼騰に対応するためにローンも膨らむ。

三井住友トラスト・資産のミライ研究所の丸岡知夫さんは「頭⾦はゼロ、もしくは住宅価格の1割以下が主流となってきたことも影響がある」とみる。住宅価格の2割以上が⽬安とされたこともあったが、歴史的な低⾦利で頭⾦を極⼒少なくする動きが強まった。同じ5000万円の住宅でもローンは頭⾦2割では4000万円で済むが、頭⾦ゼロなら当然、全額となる。

毎年度の新規貸出額は変わらず

住宅価格が上がり頭⾦も減るなら、ローンが膨らむのは⾃然だ。ただ、住宅⾦融⽀援機構の調査をよく⾒ると、残⾼は過去最多を更新する⼀⽅、毎年度の新規貸出額は約20兆円であまり変わらない。少なくない額だが、90年代は36兆円を超えたこともあるので、急増とまではいえない。

試しに、毎年度の新規貸出額と残⾼の増減額の差を計算した。各年度の返済額を推計できるためだ。すると、90年代半ばから2000年代はおおむね20兆円を超えた返済額が⾜元では15兆円台に減っている。多く借りる割に返す額が少ない「返し渋り」状態なので、新規貸出額が⼤きく増えなくても残⾼は膨らむ。

なぜ、このような状態になるのか。MFSの塩沢さんは「⾦利が低下し、住宅ローン減税との関係で、急いで返すモチベーションが薄れている」と分析する。ローン減税は年末残⾼などに⼀定の控除率をかけた⾦額を税額控除する。控除率よりも低い⾦利でローンを借りると、計算上は払う利息より控除額が⼤きくなって得をする。

お⾦を借りた⼈がメリットを得る「マイナス⾦利」の形なので、減税期間中は多く借りているほどメリットが⼤きいともいえる。この結果「近年は繰り上げ返済をしようという意識を持つ⼈が以前より減っていると感じる」(ファイナンシャルプランナーの畠中雅⼦さん)。

こうした状態を会計検査院が問題視したこともあり、控除率は22年にそれまでの1%から0.7%に引き下げられた。だが、丸岡さんは「控除率よりも⾦利が低い状態は依然、⼀部で残る」と指摘する。返済中に⾦利が変わる場合がある変動型は、⾦融機関の⾦利引き下げ競争が激しく、年0.3%台も珍しくない。

⾼齢期に多額のローンが残る懸念

それらも考えると「多く借り、返すのは急がない」⾏動には⼀定の合理性があるようにも⾒える。ただ、本当に個⼈の家計事情に合致した⾏動なのかは、冷静に考えた⽅がよいかもしれない。

畠中さんは「例えば、『マイナス⾦利』に期待しても実は控除を使い切れない⼈も多い」と話す。ローン減税は所得税から引き切れない場合、住⺠税も対象になるが、それでも納税額がそもそも少なく、控除を使い切れない例があるという。当初は使い切れると⾒込んでいても、減税期間中に収⼊が減って、計算が狂うこともある。

多く借りて返済を急がない結果、⾼齢期に多額のローンが残る懸念もある。現在でも、総務省の家計調査によれば住宅・⼟地関連の負債(負債のある2⼈以上世帯の平均)は世帯主が 50代の場合、22年で1067万円と6年連続で1000万円を超え、その上の世代も600万円前後で推移する。通常、年⾦⽣活などに⼊って収⼊が減る時期になっても、ローン返済に困らないかはきちんと試算したい。

⾜元の物価⾼からインフレが本格化すると、相対的にローンの負担感は軽減されていく可能性が⾼まる。ただ「個⼈の事情に合わせ、ローン依存の⾏き過ぎを防ぎ、考えられるリスクに対策は練りたい」(MFSの塩沢さん)。

収⼊や貯蓄の現状と将来予測も含めて、適切なローンの額を⾒極める姿勢が必要だ。多額のローンを背負って⼿に⼊れる住宅だけに、資産価値が落ちにくい物件を慎重に選ぶことも⼤切になる。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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