2023/9/19 5:00   ⽇本経済新聞   電⼦版

23区の新築は平均で1.3億円

最近「マンション価格が⾼い」と感じる⼈は多いだろう。視点を都⼼へ絞ると、さらなる⾼騰の内実が浮かぶ。不動産経済研究所(東京・新宿)によると2023年1〜6⽉の東京都23区新築マンション平均価格は過去最⾼の1億2962万円。平均で1億円の⼤台を超えた。

松⽥忠司・上席主任研究員は「23年春に平均2億〜4億円程度の超⾼額物件が供給されて平均を押し上げた」と説明する。とりわけ港区の「三⽥ガーデンヒルズ」「ワールドタワーレジデンス」などの影響は顕著だった。「今年ほど⾼額物件が集中するのは珍しく、24年上半期はいったん下落しそうだが、22年以前の⽔準まで下がる⾒込みは薄く、全体的に上昇基調が続く」という。資材・⼈件費の上昇に加え、最近は⽤地取得コストも膨らむ傾向が強く、供給側からみると23区の⾼値は揺るぎそうにない。

ただ、これほどの⾼値で需要は息切れしないのか。東京カンテイ(同・品川)の井出武・執⾏役員は

「すべてではないが、⼀部の実需層は⾼値についてきている。購⼊時、投資的な値上がり期待が加わったことが⼤きい」とみる。

中古市場にも波及

新築の⾼騰は、中古マンション価格にも波及している。東京カンテイが22年の⾸都圏マンションについて駅単位で周辺相場を調べると対象の398駅中、9割を超す駅で新築分譲時より中古価格が⾼かった。23年に⼊ってからは都⼼6 区(千代⽥、中 央、港、新宿、⽂京、渋⾕)に絞れば中古マンションも平均1億円超推移する⽉が多い。

井出⽒は「⾃分が住む⽬的の実需層でも資産価値をより精密に計算して買う⼈が⽬⽴つ。購⼊負担は重くても、値上がり期待が需要を下⽀えする」と話す。コンドミニアム・アセットマネジメント(同・千代⽥)の渕ノ上弘和代表も「新築マンションが⾼騰し、注⽬が集まったエリアでは総じて中古価格も上がる。その傾向が次の新築価格をさらに押し上げる」と『⾼値が⾼値を呼ぶ』構図を解説する。

⾦利の影響も⼤きい。⾜元で⼀部の固定型住宅ローン⾦利は上がったが、変動型はなお年0.3%程度も多い。億ションでも35年元利均等返済なら毎⽉負担は約25万円だ。

価格上昇や低⾦利に期待をかけるのは実需層だけではない。海外投資家も⾼額マンションへの関⼼は⾼い。「為替動向は不透明要素だが、⽶国など海外主要都市と⽐べ東京都⼼の不動産は、なお値ごろで魅⼒的だ。少々の円⾼では購⼊意欲は衰えない」(松⽥⽒)という指摘もある。

億ション数は23区が全国を圧倒

近年は福井県や⾹川県などの地⽅都市でも1⼾1億円を超える億ションの開発が進む。もっとも、全国的に億ションブームで沸いたバブル期と⽐べると、意外な事実が浮かぶ。東京カンテイの調べでは、全国で供給される億ション総⼾数のうち⾜元の22年は実に7割超を23区が占める。少しずつ増加しているとはいえ、23区を除く全国の億ションの⼾数は合計しても、23区の3分の1程度にすぎない。

なぜここまでの地域差があるのか。渕ノ上⽒は「地⽅の億ションの買い⼿は、地元企業オーナーや開業医など地域から離れられない事情を抱える『地元の名⼠』に限られる」とし、都23区のような値上がり期待を背景とした需要層の拡⼤が乏しいとみる。松⽥⽒も「地⽅には海外投資家の⽬もあまりむいていない」と話す。バブル期に中⼼市街地は地価が急騰し、地⽅郊外にまで億ション供給エリアが拡散していたのとは対照的だ。

東京カンテイの井出⽒は「現在のマンション市場は、買い⼿も売り⼿も、純粋な『住まい』としての利⽤価値以上に『資産性』を重視する傾向が強まった。このままでは⼿堅い価格推移が⾒込める都⼼集中が今後、⼀段と加速しかねない」と話している。

相続税の算出ルール変更、市場への影響は限定的

国税庁は2023年6⽉末、マンションの実勢価格と相続税の評価額の格差を利⽤し、相続税を低く抑え る、いわゆる「マンション節税」を防ぐためのルール⾒直し案を⽰し、24年1⽉からの適⽤を⽬指している。節税を⽬的とした富裕層の⾼額マンション需要がしぼむ可能性があるが、全体の価格動向にも影響はあるだろうか。

不動産経済研究所の松⽥⽒は「購⼊を⾒送る層も⼀部には出てくるだろうが、節税以外の⽬的で買う層は多く、新たな買い⼿がすぐ現れる。市場に⼤きな影響が出ることは考えにくい」と推定する。東京カンテイの井出⽒も「ルール改正案発表後のデータを分析しても、節税⽬的が多いとされる⾼額タワマン上層階などの売買動向に変化はなく、影響は限定的だ」と話す。

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