2023/10/15 20:00 ⽇本経済新聞 電⼦版
不動産各社がホテルへの投資を増やす。⽇鉄興和不動産はホテル事業に参⼊し、5年間で400 億〜500億円を投じる。NTT都市開発は今後3年で供給する客室数を新型コロナウイルス禍前より5割増やす。インバウンド(訪⽇外国⼈)消費が回復する中、需要の受け⽫を整える。
⽇鉄興和不動産は第1弾として、2024年3⽉に東京・上野で客室数145室のホテルを開業する。ブランドは「& Here(アンドヒア)」。宿泊料⾦は最⼤4⼈が利⽤できる40平⽅メートル前後の部屋で1泊3万〜5万円、6⼈までのスイートルームは10万〜12万円に設定する。すでに予約を受け付けており、8割がインバウンド客だという。
⽇鉄興和不動産は東京・新宿と⼤阪・難波でも25年度にホテルを開業する。「宿泊客のインバウンド⽐率は7割程度を想定する」(三輪正浩社⻑)。無⼈チェックイン機の導⼊や清掃業務の外注などを進め、スタッフは15⼈と少⼈数で運営する⽅針だ。
NTT都市開発は24〜26年に京都府、⼤阪府、北海道の3拠点で計526室のホテル開業を計画 する。新規の客室数はコロナ禍前の17〜19年の3年間と⽐べ5割増える計算だ。シンガポール発の⾼級ホテル「カペラ」や⽶ハイアット系など外資系ホテルを誘致する。⼤阪城の歴史遺産を楽しめたり、京都の芸妓(げいこ)や舞妓(まいこ)といった伝統⽂化に触れたりできる施設に近接する⽴地を⽣かし、インバウンド対応を進める。
三井不動産は今後、海外を含めて約1000室のホテルを新規に開発し、客室数を現在より1割弱増やす。コロナ禍の20年は40%まで落ち込んだ稼働率が23年4〜6⽉は80%超にまで回復しており、今後もインバウンド需要が伸びると⾒込む。ヒューリックも25年に東京・銀座に⾼級旅館の開業を計画するなど、不動産各社はホテル事業に⼒を⼊れる。
不動産サービス⼤⼿のジョーンズラングラサール(JLL)によると、⽇本国内のホテルへの投資額は23年1〜6⽉に前年同期⽐1.7倍の約2034億円となった。19年同期(2931億円)とくらべると7割の⽔準だが、海外からの投資総額は1285億円と3.6倍まで膨らんだ。JLLの阿部有希夫ジェームズマネージングディレクターは「円安局⾯に加えて低⾦利で融資環境が良好であるとして海外の投資マネーが集まっている」と分析する。
観光庁の宿泊旅⾏統計調査(速報値)によると、8⽉のホテルや旅館の宿泊者数は6227万⼈とコロナ禍前の19年同⽉とほぼ同⽔準まで回復した。うち外国⼈は1034万⼈でコロナ禍前を上回った。中国⼈の団体客も解禁され、さらなる客数の増加も予想される。
不動産業界では新築住宅の着⼯数が減っており、近年⼤量に供給されたオフィスビルでは賃料収⼊が落ち込むリスクを抱えている。住宅とオフィスの先⾏きに不透明感が漂う中、各社はホテル事業に成⻑の期待をかける。インバウンドに加え、「国内の富裕層向けなどでも伸びしろはまだある」(不動産⼤⼿幹部)。
課題についてJLLの阿部⽒は「建設現場の⼈⼿不⾜による⼯期延⻑で建築コストが膨らめば、都⼼に⽐べて客室単価を上げにくい地⽅を中⼼に影響が出てくる可能性もある」と指摘する。
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