2023/9/20付 ⽇本経済新聞 朝刊
新型コロナウイルス禍からの経済再開が地価上昇の勢いを⾼めている。国⼟交通省が19⽇発表した2023年の基準地価は、住宅地や商業地など全⽤途の全国平均が前年⽐1.0%上がり、2年連続のプラスだった。上昇率はコロナ前の19年の0.4%を上回り、回復基調が鮮明となった。(1⾯参照)
住宅地の全国平均は前年⽐0.7%伸びた。商業地は1.5%上がり、いずれも2年連続の上昇となった。地⽅圏も住宅地、商業地がそれぞれプラスに転じた。
コロナ下で全国の地価はマイナスに沈んだが、⾜元では上昇が⽬⽴つ。三⼤都市圏の全⽤途平均は19年の2.1%から2.7%に伸び率が広がった。
東京23区の1平⽅メートルあたりの平均価格は168万円で、バブルで⾼騰した1990年代初めと⽐べると4割程度の⽔準にある。
全国の商業地は19年の前年⽐0.5%から23年は同1.5%まで伸び率が広がった。商業地で地価が全国トップだった東京・銀座2丁⽬の「明治屋銀座ビル」は4年ぶりのプラスに転じた。1平⽅メートルあたりの地価は4010万円で前年⽐2%伸びた。
経済活動の再開とともに都市圏を中⼼にインバウンド(訪⽇外国⼈)の流⼊が増え、繁華街や観光地の地価を押し上げた。22年10⽉の⽔際措置の緩和以降、⾜元の訪⽇客数はコロナ前の19年の8割に迫る⽔準まで戻っている。
商業地で変動率がプラスとなった都道府県は22地点で、昨年の18地点から4地点増えた。地⽅での持ち直しが顕著で、福島、⽯川、滋賀、奈良が新たにプラスに持ち直した。
住宅地は札幌、仙台、広島、福岡の「地⽅4市」がけん引した。札幌駅までのアクセスが便利な北海道恵庭市の中⼼部は上昇率20%を超える地点が多かった。⼈⼝集中の進む札幌市から周辺に住宅需要が広がる。
⼈⼝減少や災害の発⽣によって地価の下落が⽬⽴つ地区もあった。⽯川県能登半島の珠洲市中⼼部の住宅地はマイナス10.6%となった地点があり、下落率が全国で最も⾼かった。同地域では23年に最⼤震度6強の地震が発⽣した。
今後の焦点は、コロナ下で地価相場の⽀えとなった海外マネーの動向だ。⽇本の低⾦利環境では、ドルを元⼿に円を調達して不動産に投じれば利益を上げやすい。
不動産サービス⼤⼿のジョーンズラングラサール(JLL)によると⽇本の不動産投資額は23年1〜6⽉で2兆1473億円と前年同期から52%と⼤幅に伸びた。海外投資家の購⼊額は⾜元で5130億円ですでに22 年通年の6割に達した。
⼤東雄⼈・リサーチ事業部シニアディレクターは「⽇本は先進国の中でも数少ない不動産の投資リターンが⾒込める市場だ」と分析する。
⼀⽅で、世界的な物価⾼騰を受けた各国中央銀⾏の⾦融引き締めによって⾦利が上がり、投資環境は⼀変した。⽇本の超低⾦利がいつまで続くかは⾒通せない。
三井住友トラスト基礎研究所の坂本雅昭・投資調査部⾨⻑は「⽶国の投資家による⽇本の不動産への投資意欲はやや弱まっている」と話す。
中国の不動産不況といった新たなリスクも⽣じている。坂本⽒は「中国の不動産市場が悪化した場合、⽇本市場を⽀えるアジアの投資家の投資姿勢にも影響が出る恐れがある」と指摘する。
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