2023/9/6 5:00  ⽇本経済新聞   電⼦版

新築マンション価格が⾼騰するなか、中古マンションへの関⼼が⾼まっている。選ぶ際に築年数や価格帯、⽴地などにこだわる⼈は多いが、意外な「盲点」も多い。不動産コンサルティングのさくら事務所(東京・渋⾕)によるマンション分析の現場を取材し、内⾒時のポイントをまとめた。

ごみ捨て場に管理の乱れも︖

記者が訪れたのは東京都⾜⽴区にあるマンション「レクセルガーデン北綾瀬」。築約15年、地上9階、28⼾で、さくら事務所によるマンション資産性を多⾓的に評価するサービスで⾼評価を受けた物件だ。

現地に到着すると早速、ポイントの説明が始まった。まず内⾒時は可能な限り、マンションのごみ捨て場や駐輪場などの共⽤部を⾒て回ることだ。

レクセルガーデン北綾瀬はいずれも整然とした状態だったが、こうした場所に管理の乱れが垣間⾒える例は多いという。さくら事務所のマンション管理⼠、⼭本直弥さんは「ごみの分別ルールが徹底されていなかったり、ほこりを被って使われていない⾃転⾞が放置されていたりすることがある。住⺠のモラルやマンション管理組合の活動の善しあしが凝縮して現れる場所だ」と指摘する。

次に駐⾞場。都市部などでは若い世代を中⼼に⾞を持たない⼈は増えているが、そうした⼈でも実はマンション内の駐⾞場のチェックが⽋かせない。特に「機械式駐⾞場は(メンテナンスや修理に⼤きな費⽤がかかる)『⾦⾷い⾍』。機械式なのにガラガラで埋まっていない駐⾞場は今後、マンションの修繕積⽴⾦不⾜の発⽣を⽰すサインになり得る」(⼭本さん)。

防災対策もしっかり確認

そして近年、警戒感が⼀段と⾼まっているのは⾃然災害リスク。実際に全国各地で集中豪⾬などが増えており、ハザードマップでマンションの⽴地が抱えるリスクを確認しておく必要性は増している。

災害リスクを完全にゼロにするのは難しいが、マンション管理組合の防災意識によって被災後の⽣活には⼤きな差が⽣まれることもある。

例えば、災害に備えた備蓄だ。⾮常⽤⾷料や簡易トイレなどをどの程度ストックしているかだけでなく、それらはどう管理されているかもチェックしておきたい。レクセルガーデン北綾瀬では、備蓄倉庫のカギは複数⽤意して分別管理しているほか、倉庫の⼊り⼝の壁には備蓄品のリストが掲⽰してあった。いずれも被災時、マンションに居合わせた⼈が備蓄品をスムーズに使えるようにするための措置だ。⼭本さんは「被災時に管理員や管理組合の理事がマンションにいるとは限らない。せっかくの備蓄を使えない事態とならないためには、こうした⼯夫が⼤切だ」と話す。

共⽤部を⾒て回った後、いざ⽬当ての住⼾へ向かう際にチェックしたいのは廊下だ。壁のタイルの剥落、床の⽔はけなど将来リスクを推し量る材料が多い。

さくら事務所のホームインスペクター(住宅診断⼠)、友⽥雄俊さんによると、壁のタイルが⼀部だけ⾊が微妙に違う場合、剥落を修理した跡の可能性がある。「外廊下なら⾬上がりなどで⼩さな⽔たまりが残っていないかなど⽔はけの問題を⾒ておく。⽬線を⾼低それぞれに向け、観察しておきたい」。あえて⾬が降った後に内⾒するのも⼀案だ。

部屋の中は多くの⼈が広さや間取り、⽇当たりなどが⾃分の希望に合うかを確認すると思うが、これとは別にしっかり聞き取っておくべきことがある。

リフォームが済んでいるかどうかだ。友⽥さんは「築15年以上にもなるとリフォーム済みで売り出す物件も増えてくる。壁などに⽔ぬれの跡がないかはしっかり⾒ておきたいが、たまたまリフォーム直後でキレイなだけかもしれない」と指摘する。建物の⽋陥が隠れている恐れもあるので注意が必要だ。

中古物件を買って⾃らの好みにリフォームしたいと考える⼈は多い。ただ、実はどんな⼯事も⾃由にできるとは限らない。リフォームの⼯事仕様などについて、マンション管理規約で定めている例があるからだ。しっかり事前に確認したい。

修繕積⽴⾦が不⾜していないか

マンションの敷地内だけでなく、周辺⽴地の⼈⼝動態、再開発なども資産価値を占う点で⼤切だ。加えて、マンションの「財務」といえる管理組合の管理費と修繕積⽴⾦の収⽀もできる限り、細かく聞き取っておく⽅が無難だ。

⼭本さんは「積⽴⾦は安いと購⼊後の毎⽉コストが抑えられていいと思い込みがちだが、安すぎて不⾜しては結局、(適切な管理や修繕が⾏き届かない)『スラム化』などによって資産価値が下落して損失を被りかねない」と話す。レクセルガーデン北綾瀬は数年間の話し合いを経て、現在の毎⽉の積⽴⾦は分譲当初の約3.5 倍に値上げした。管理組合の理事⻑、後藤謙治さんは「無駄な⽀出削減も徹底し、修繕計画も以前より⼤幅に⻑期化するなど⼿を尽くしたうえで、なお不⾜する分を所有者でしっかりと話し合った」と話す。

こうした内実を聞いておくと、毎⽉払う積⽴⾦も単なる⽀出ではなく、将来的に資産価値を保つための投資にみえてくる。表⾯的な数字だけで判断するのは禁物だ。

築年数も同じ。古くてもしっかりと修繕が施され、今後の⼯事に備えた積⽴⾦もたまっているマンションなら、修繕が⾏き届かない築浅マンションより状態はむしろ良い場合も⼗分に考えられる。

建築コストの上昇などを背景に新築マンション価格の⾼騰は当⾯、続くとみる専⾨家は多 い。中古マンション価格もこれにつれて値上がりが⽬⽴つだけに、今まで以上に、しっかりした選別眼を磨く重要性は増している。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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