2023/6/28 2:00 ⽇本経済新聞 電⼦版
東京都内のマンションは投資需要によって⾼騰している東京都⼼の中古マンション価格が⾜元で1億円を超えている。将来の売却益を狙う海外の投資家の買い意欲が⽔準を押し上げた。⾸都圏では多くのエリアで新築時と価格が逆転しており、価値が2.5倍に跳ね上がる物件もある。⼀般世帯には⼿の届かない値段になり、住まいとしての役割がかすみ始めている。
「⿇布台や⻘⼭で良いマンションはないか」。横浜市の不動産仲介事業社、リストインターナショナルリアルティにはアジアの富裕層や不動産投資家からこうした問い合わせが後を絶たない。同社の福島⻨取締役は「都⼼の⾼額物件は相変わらず引き合いが強い」と驚く。
海外勢の買い意欲を背景に、マンションは新築や中古を問わず値上がりが続いている。
六本⽊⼀丁⽬は新築時の2.5倍
不動産情報サービスの東京カンテイ(東京・品川)がまとめた「リセールバリュー」をみると、中古マンションの再販価値の⾼騰ぶりがわかりやすい。築後10年程度たった中古マンションの平均希望売り出し価格を新築時と⽐べて算出した。2022年の⾸都圏の平均は132.5%だった。前年から12.7ポイント上昇しており、新築時の1.3倍の価格で売りに出されている。18年時点では91.4%と新築時を下回っていた。20年に100%を超えて逆転し、なお上昇している。
駅別の⾸位は東京メトロ南北線の六本⽊⼀丁⽬駅で、リセールバリューは251.6%となっ た。東京メトロ千代⽥線の新御茶ノ⽔駅が208.1%、⼩⽥急⼩⽥原線の代々⽊上原駅が 192.0%で続く。調査対象の398駅のうち、全体の98%に当たる389駅で新築時の価格を上回る「逆転現象」が起きている。
公⽰地価の伸びと⽐較すると、中古マンションの⾼騰ぶりが際⽴つ。六本⽊⼀丁⽬駅周辺エリアの公⽰地価は、22年1⽉1⽇時点で1平⽅メートルあたり327万円。10年前と⽐べて1.5倍の伸びにとどまっている。
割安な⽇本を選好
要因とされるのが、海外からの投資ニーズだ。海外の不動産投資家が⽇本の新築物件に加えて、中古マンションを好む理由は複数ある。そのひとつが割安さだ。
もともと⾹港やシンガポールなどアジアの都市部と⽐べると⽇本の不動産は安い。22年に為替相場が円安に振れたことで、さらに割安になった。相場にまだ上昇余地があると判断し、将来の売却益を⾒込んでいる。
相対的な投資環境の良さからも⽇本は選ばれやすい。海外勢は地域ごとに保有物件を分散させる傾向がある。アジアで有⼒な投資対象になるのは主に⽇本と中国。中国では当局による規制強化などで市場が不安定になる懸念もあり、投資判断が難しいため、⽇本が好まれる。
中古マンションは物流施設や商業施設などと⽐べて売買が多い。取引の動向や実績といった投資の判断材料を追いやすいことも⼤きい。情報の⼊⼿のしやすさから物件を内⾒しないまま売買することも珍しくないという。
買えない⼀般世帯
海外投資家は保有物件をいつでも売却できるよう賃貸には出さず、⽇本観光の際の⼀時的な宿泊先として使うなど、住まいとしては活⽤しない。こうした海外勢が都⼼の優良物件に触⼿を伸ばし、価格⽔準を押し上げている。
東京カンテイ発表の東京都⼼6区(千代⽥、中央、港、新宿、⽂京、渋⾕)の中古マンション価格は5⽉が70平⽅メートル当たり1億256万円と、02年の集計開始後の最⾼値を更新し続けている。
「⽐較的資⾦に余裕があるパワーカップルでさえ買えなくなっている。中古マンションも『⾼値の花』になってしまった」(東京カンテイの⾼橋雅之主任研究員)
実需の鈍化が響き、中古マンションの在庫は21年夏ごろから増勢が続く。都⼼6区で売りに出されている流通⼾数は5⽉が4099⼾と前年同⽉⽐16%多い。リストの福島⽒も「条件によっては売買の動きがまったくない物件も出てきた」と話す。
旺盛な投資ニーズが⼀部の⾼額物件を買い⽀えていることから、在庫が膨らむ中でも都⼼6区の価格⽔準は上昇が続いてきた。今後は⽴地条件などが劣る物件から価格調整が進む可能性もある。
マンションは中古までも「億ション」となった。住まいを求める⼀般世帯に残された選択肢は賃貸か⼩規模の⼾建て住宅ぐらい。都⼼のマンションは住むものから売るものに変わっている。
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