2023/10/18 0:00 ⽇本経済新聞 電⼦版

ニセコ、富良野、そして道頓堀

では、中国マネーによる⽇本での不動産購⼊はどんな形が多いのか。中国から様々な⼿段で持ち出された⼤型、⼩型の資⾦は、⽇本でのビルやアパートの1棟買い、⼩さな建物付き物件の購⼊、⼤⼩様々なマンションの部屋購⼊などに充てられる。

これらは⼤規模改装の後、主として外国⼈対象の「⺠泊」、マンション・アパート賃貸に回る。⺠泊は個⼈住宅などを宿泊⽤に貸し出すものだ。訪⽇外国⼈観光客は、スマホのアプリで気軽に部屋を予約し、指定の場所にあるキーを受け取り部屋に⼊る。貸し⼿と顔を合わせる形態はまれだ。

「⽇本での⺠泊で得られた収益を⽇本在住の代理⼈が中国にいるオーナーに送⾦したり、不動産取引の紹介料を中国内の⼈物に振り込んだりする際、⼿軽なアプリであるアリペイなどを利⽤してしまう例はあるだろう」。関東の不動産関係者は、⽇中間の送⾦を巡る様々な問題点を指摘する。

世界的に⼈気がある北海道のスキーリゾートであるニセコ地区。美しい⽺蹄⼭の⻄に広がるホテル集積地である「ひらふ坂」では、中国・⾹港を含む外国資本によるリゾートマンションや⾼級ホテルの建設ラッシュが今も続く。周辺には多くの⼯事⾞両が⾏き交う。

この「ひらふ坂」のほか、ニセコ・アンヌプリ地区、ニセコHANAZONO地区も注⽬度が⾼い。 世界の誰もが知る中国のIT(情報技術)⼤⼿の創業者も、このニセコ地区に別荘を構えるという。

ニセコ地区は、もともとオーストラリアや欧⽶からの観光客、⻑期滞在者が多かった。既に開発が進み地価も上がってきたため、中国系資本が新たに注⽬しているのが、北海道中央部の富良野地区だ。

各地の関係者らの話を総合すると、中国系による⽇本への不動産投資の規模は、1件当たり2000万円程度の⼩さなものから、数⼗億円という⼤規模なものまで様々な形態がある。

中国では、2020年初めからの新型コロナウイルス感染症の流⾏後、厳しい「ゼロコロナ」政策がとられた。この結果、中国と海外との⼈の往来は激減したが、⽇本への資⾦流⼊はその頃も続いていた。中国にいる資産家は訪⽇することなく、投資先を決め、実⾏していたことになる。

⾞を買うように⽇本のマンション購⼊

中国マネーの流⼊は関⻄地区でも同じだ。「中国⼈は、まるで安い⾃家⽤⾞でも買うかのように気軽に⽇本の不動産を買っている」。こう指摘するのは⼤阪で⼿広く不動産売買の紹介をしている関係者だ。

中国の⼈々の物件の選び⽅が興味深い。「⼤阪で特に⼈気の少額物件は、便利な中⼼部にありながら、他地域よりは格安な住宅街だ。街のイメージを気にする⽇本⼈が⼿を出しにくい場所でも、中国⼈は即決で買う」という。

この地区には、1軒2000万円前後から⼩規模な中古⼀⼾建て、アパート物件が豊富にあり、すぐに中国⼈の買い⼿がつく。規定の公道に接していないため再建築不可の建物付き物件でも安ければ売れる。これをリフォームし、利回りが良い⺠泊を経営するケースが多い。

⼤阪の⼤繁華街である道頓堀の周辺では、中国⼈によるビル1棟買いが続く。「隣のビルもオーナーが中国の⼈に変わり、⼤規模な改装が始まったね。⺠泊か貸店舗でしょう」。当地で⻑く喫茶店を経営してきた70代後半の⼥性オーナーの声だ。通り沿いのビルでは、「⺠泊経営の開始」を告知する張り紙も⽬⽴つ。

道頓堀周辺には、中国⼈向け専⾨に北海道産などの⾼級海鮮を売る店もあった。⼤きな殻付きカキ、⼤型のシャコ、伊勢エビなどだ。商品表⽰は全て中国語で、客も中国⼈。中国の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」を通じた販売もある。だが、中国⼈経営者の⾒切りは早い。売れないとわかれば半年ほどで閉店し、別の場所に移る。⽇本でまるで⾃家⽤⾞を買うように気軽に不動産を買う中国のお⾦持ち。その⾏為は、⽇本での⻑期滞在ビザ取得に間接的に絡んでいる。外国⼈が⽇本に⻑く滞在し、最終的に永住ビザを得たい場合、⽇本での事業の経営や管理に従事する「経営・管理ビザ」で在留資格を取得するのが便利だ。

重要な要件は、設⽴した企業が⼀定期間、⿊字を出し続ける優良経営であることだ。毎年、安定的に収益を確保できる不動産を企業所有とし、⺠泊などを営むなら、条件をクリアしやすくなる。

⽇本の地価⽀える中国⼈の不安

⼀⽅、資本逃避を阻⽌したい中国政府は、個⼈の外貨持ち出しを厳しく規制し始めた。既に年間5万ドル(約750万円) 超の持ち出しは極めて難しい。中国の⼈々が海外で不動産を買う場合、この規制をかいくぐるために様々な⼯夫を凝らす。

多くは合法的な⼿段だが、⼀部では問題含みのグレーな⼿法もある。「地下銀⾏」を利⽤した海外への資⾦移動もその⼀種だ。ただ、中国内の資⾦移動のつもりで、アリペイなどのアプリを使って巨額送⾦すれば、⽇本の銀⾏法違反に問われかねない。

北海道のニセコ、富良野、そして⼤阪・道頓堀。⽇本の⼀部地域の地価強含みを⽀えてきたのは、⽇本に流⼊し続ける巨額の中国マネーだ。習近平政権の住宅政策が⽣み出したこの構造は、中国の住宅・不動産市場の好転がない限り、当⾯続く。問題含みの中国の経済政策 は、予想を超える形で海を越え、⽇本経済に影響している。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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