2024/3/9付 日本経済新聞 朝刊
中古マンションを売買する際の目安になるリセールバリュー(再販価値)で、東京都心の上昇が際立つ。資産価値が長期にわたり維持・拡大されるとして、海外の不動産投資家や富裕層のマネーが集中するためだ。上位の顔ぶれは約10年で様変わりし、再開発が一巡したエリアや郊外は姿を消した。
購入した商品を中古市場で売却する際に得られる利益を再販価値と呼ぶ。中古流通が活発な自動車や不動産でよく用いる概念で、商品の資産価値を映す。
不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)がこのほど、2014年以降の中古マンションの再販価値を地域ごとにまとめた。築10年程度の中古マンションの平均希望売り出し価格を新築時の販売価格と比べて算出する。
23年の1位は東京都港区の188.4%だった。新築時のおよそ1.9倍の価格で売りに出されていることを表す。2位は東京都千代田区で187.1%、3位は東京都渋谷区の180.5%だった。上位10エリア中7エリアを都心がある東京23区が占めた。
都心部の中古マンション相場を押し上げるのは、海外の不動産投資家や富裕層だ。人口流入が続き中長期で安定かつ高い資産性が見込まれるとして買い意欲が旺盛だ。
1月の都心6区(千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷)の平均希望売り出し価格は、70平方メートル当たり1億1138万円。02年の集計開始後の最高値を12カ月連続で更新した。
「ふじふじ太」名義で活動する、不動産仲介会社FJリアルティ(東京・中央)の藤田祥吾社長は「不動産投資家はマンション購入の意思決定が早い。都心部で優良物件を見つけると、すぐさまキャッシュで一括購入し、数カ月後に価格を上乗せして売却してくる」と話す。
約10年で再販価値上位の顔ぶれは大きく変化した。
14年の1位は京都市中京区で、再販価値は132.5%だった。2位が同下京区で123.0%、同左京区も110.2%で6位だった。このほか川崎市中原区が108.0%で8位、千葉県浦安市が107.9%で9位、東京都武蔵野市が107.3%で10位だった。
都心部は上位10エリア中4エリアと、当時の顔ぶれは現在より多彩だったといえる。およそ10年がたち、マネーが集まる都心部に押し出されるかたちで地方や郊外の多くが上位から姿を消した。
京都市の再販価値が高めなのは建物規制の影響だ。同市は景観や住環境の保全などを目的に建築物の高さを規制してきた。市内のマンション供給に限りがあるため、既存物件の価値は相対的に高くなる。
同市は23年4月から一部で規制を緩和した。タワーマンションの開発が進むかに注目が集まる。
マンション供給が増えれば、既存物件の価値に下押し圧力がかかる。
川崎市や浦安市は街の再開発が一巡した結果、以前ほどの人気はなくなっている。再開発前に比べて街の成長性が乏しくなり、海外勢や富裕層のほか、実需層からも選ばれにくくなった。中古マンションとして売却する際に強気の価格設定がしにくいことから、再販価値がしぼんだ。
東京カンテイの高橋雅之主任研究員は、再販価値を決める要素は立地の優位性、交通利便性、生活利便性、将来性の4つだと指摘する。その上で「不動産投資家や富裕層は特に立地への目線が厳しく、都心のマンションへのこだわりを強めている」と説明する。
マンションの投資利回り(キャップレート)を世界で比較すると、東京が3~4%程度なのに対し、上海で1%台前半、香港・台北は1~2%程度とされる。海外の不動産投資家や富裕層は都心部のマンションを割安とみており、旺盛な買いが続く一因になっている。
目先は、日銀の政策修正が相場の波乱要因になりうる。借入金利の上昇で投資利回りとのスプレッド(利回り差)が縮まれば、投資マネーの動きが鈍り、相場が変調する可能性がある。
住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。
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