2024/1/15 4:00 ⽇本経済新聞  電⼦版

都内に住む80代の⼥性Aさんは相続税の相談で税理⼠のもとを訪れた。特に悩んでいるの  が、亡くなった夫から引き継いだ株式と投資信託。物忘れが最近多くなってきたこともあり、「相続税対策として株と投信を処分して現⾦にするのがいいか、そのまま相続させるべきなのかなどを知りたい」(Aさん)という。

相続⽅法「未定」が6割

相続を控えて運⽤資産をどうするか迷う⼈は多い。投資信託協会が2022年に実施した調査  で、全国の60歳以上の男⼥を対象に現⾦・預貯⾦以外の⾦融資産をどう相続させるつもりかを聞いたところ、「決まっていない」との回答が58.5%と最も多かった(有効回答1556)。

「全てそのまま」は18.3%、「全て現⾦化」は14.4%にとどまる。

⽼後の資産を⻑持ちさせるため⾼齢期も運⽤を続けることへの関⼼が⾼まるなか、「⼦どもなど相続⼈の負担にならないよう⽣前に運⽤資産を整理する『投資の終活』をしておくことが⼤切」とファイナンシャルプランナー(FP)の横⽥健⼀⽒は話す。

相続税の節税を意識して投資の終活をするなら、主な資産の相続税上の扱いを押さえておきたい。相続税は相続⼈が引き継ぐ財産の課税上の評価額を出し、相続財産の総額が基礎控除(3000万円+法定相続⼈の数×600万円)を差し引くなどして課税対象額があれば発⽣する。評価額を出す際に適⽤する価格は資産によって異なる。

例えば⼀般的な⾮上場の公募投信は死亡⽇の1⼝当たり基準価格を適⽤する。上場株式や上場投信(ETF)は①被相続⼈の死亡⽇の終値②死亡⽉の終値平均③死亡前⽉の終値平均➃死亡前々⽉の終値平均から最も低い価格を選ぶため、株式・投信は相場動向次第で相続税の評価額が左右される。

⽣命保険⾦の⾮課税枠⽣かす

辻・本郷税理⼠法⼈の浅野恵理税理⼠は「税制上の利点が⼤きい⽣命保険に⼊るのが⼀案になる」と助⾔する。死亡保険⾦は被相続⼈(亡くなった⼈)の財産に当たらないが、被相続⼈の死亡をきっかけに受け取る「みなし相続財産」として相続税の対象になる。ただし法定相続⼈1⼈につき500万円までが⾮課税になる。

仮に株式や投信を売却した資⾦900万円で、契約時に⼀括して保険料を払う「⼀時払い終⾝保険」に⼊り、保険⾦1000万円を受け取るとしよう。法定相続⼈が2⼈なら1000万円までが⾮課税になり、そのぶん相続税の対象となる財産が減るため節税につなげることができる。

節税効果を⼤きくすることが⾒込めるのが不動産だ。⼟地は国税庁が毎年7⽉に公表する「路線価」で評価するのが基本で、路線価は時価(公⽰地価)の80%程度を⽬安に決まる。建物は固定資産税で評価し、建物価格の60%程度が⽬安となっている。運⽤資産のほかにまとまった資⾦がある⼈なら「不動産購⼊が選択肢の⼀つになる」と税理⼠法⼈⼭⽥&パートナーズの浅川典⼦税理⼠は話す。

ただ不動産は相続をする際に分割をすることが難しく、トラブルになりやすい。相続⼈が複数いる場合は、不動産を引き継ぐ⼈以外の相続⼈に預貯⾦を多く渡すといった配慮が⼤切 だ。また国税庁は分譲マンションを利⽤した過度な相続節税を抑えるため、2024年1⽉から評価額のルールを⾒直す。マンションを購⼊するなら、新ルールで評価額がどうなるかを踏まえて判断したい。

⼀⽅、現預⾦は⾦額そのままが相続税の課税上の評価額になる。運⽤資産を現⾦化することによる節税余地は乏しい半⾯、遺産分けをしやすいといったメリットはある。相続財産の総額が基礎控除の範囲内で相続税がかからなかったり、相続⼈同⼠が不仲で遺産争いをする可能性があったりするなら⼀案になりそうだ。

⽼後資⾦は⼗分に確保

こうした投資の終活をする際はいくつか注意点がある。まず重要なのは⽼後の⽣活資⾦を⼗分に確保しておくこと。例えばいったん不動産にすると、現⾦化するのに⼿間や時間がかかりやすい。運⽤資産を現⾦にした場合に物価上昇が続けば、実質的な価値が⽬減りするリスクがある。認知能⼒が低下すると⾦融商品の取引は制限されるため、「早めに着⼿するのが望ましい」と税理⼠法⼈チェスターの河合厚税理⼠は話す。

保有している投資商品によっては運⽤を続け、⼦どもなどに相続させる⼿もある。横⽥⽒は「世界の幅広い株式に投資する低コストのインデックス(指数連動)型投信なら⻑期的な恩恵が期待できる」と助⾔する。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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