2024/3/2付 日本経済新聞 朝刊

東京のような新築住宅の価格が高くなった都会では、割安な中古住宅の需要が多いはずだが、相続の問題が片付かないうちに空き家化してしまうケースが目立つ。地方でも交通の便の良しあしなどで古くなった住宅の需要には差が生じる。各自治体は地元の様々な事情を考慮しながら空き家対策を進めている。

2018年度の総務省の推計で全国の区市町村で最も多い5万戸の空き家があるとされた東京都世田谷区では、16年に空き家対策の専門チームが発足している。倒壊の恐れのある空き家の所有者に処分を促すなど対策を重ねてきたが、空き家を減らしてもすぐに新たな空き家が生まれるという状況が続いた。

そこで力を入れるようになったのが、空き家の「予防」だ。世田谷区では一人暮らしの高齢者が増えていて将来空き家になる可能性がある家が多く、21年ごろから独居高齢者宅を訪問する活動をしている。

訪問後に家族と相続についての話し合いが始まるなど、空き家の発生を防げることもあるが「その数は年間10件ほどにとどまる」(空き家対策の担当者)。今後は高齢者支援をしているNPOや区の保健福祉部局との連携を強化するなど、効率的に高齢者へのアプローチをしたいという。

千葉県南房総市では空き家対策として、法律や建物、不動産などの専門団体と連携し、空き家の所有者に解決方法を提案するセミナーや相談会を実施している。
これまでの約2年間で、のべ80人ほどが参加した。「空き家を手放すには、亡くなった親の名義のままにしてきた土地の相続登記をする必要があるとわかった」という参加者もいて、開催後に売買や賃貸、解体に至った実績も実際にあるという。


茨城県笠間市は23年度から、空き家を所有者から借り上げて修繕、整備した上で移住希望者などにサブリース(転貸)する事業を始めた。不動産として一般的に流通しにくい、農村部などにある空き家の活用を促す施策という位置づけ。
昨夏には、かつて多くの芸術家が住居やアトリエを構えた「芸術の村」と呼ばれる区域にある第1号の物件に、若手の画家が県内から移住してきた。
全国有数のクリの産地として知られる笠間市は、陶芸家の活動も盛んな地域で、移住希望者が多い。芸術の村はこうした移住希望者が見つかりやすく、空き家対策のサブリース事業が効果を発揮しやすい場所の一つとみられている。


山あいに多くの別荘が点在する栃木県那須町も、空き家の把握に本格的に乗り出した。水道の利用状況から長期間人が住んでいない可能性がある約1600戸を特定。現地調査などで実態を調べている。

山あいの民家は人が住まなくなると、窓の割れや雨漏りで急速に劣化が進む。早期に特定して対応しないと、移住者による再利用や飲食店、宿泊施設などへの転用が難しくなる。
23年12月には不動産情報サービスのLIFULL(ライフル)、IT企業のパーソルプロセス&テクノロジー(東京・江東)と組み、ドローンを使って調査する実証実験もした。「地上からではわかりにくい屋根や外壁の傷み具合を確認できるのは大きな利点」(町の担当者)といい、本格活用に向け職員を対象にしたドローン操作の技能実習を始める方針だ。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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