2023/11/8 5:00 ⽇本経済新聞 電⼦版

先島諸島の沖縄県宮古島市で地価が急上昇している。2023年の基準地価(7⽉1⽇時点、全⽤途)は前年⽐16.6%上がり、都道府県別で全国⼀の上昇率だった沖縄県全体の4.9%を上回 った。背景にあるのは観光需要の拡⼤を⾒込んだ投資マネーの流⼊だ。相次ぐリゾートホテル建設などに伴い「宮古島バブル」とも呼ばれる不動産価格の伸びが続いている。

沖縄本島から南⻄約300キロメートルの位置にあり、宮古島市に属する伊良部島。宮古ブルーと称される⻘く透き通ったサンゴ礁の海岸沿いに7⽉、⾼級ホテル「アルカディアリゾート宮古島」が開業した。全14室が海を望むスイートルームで8⼈まで泊まれ、料⾦は1泊280万円(1部屋)。廉価なプランも1⼈10万円台だが、夏場は満室に近い稼働だった。

かつて伊良部島の⼟地は地元で「⼆束三⽂」と⾔われていた。近年は相次ぐ開発でリゾート地に発展し地価が上がっている。きっかけは15年の伊良部⼤橋の開通だ。宮古島とつながる全⻑3.5キロの橋で、市街地まで⾞で10〜20分で移動が可能になった。

19年には下地島空港の新ターミナルが開業した。⾸都圏や関⻄のほか、アジア各国・地域からの定期便やチャーター便が就航し、新型コロナウイルス禍前の19年度の観光客数は14年度の2.5倍の106万⼈に急伸した。

リゾートホテルの建設も相次ぐ。国内⼤⼿デベロッパーと海外の有名ホテルが組むケースも複数あり、宮古島市の宿泊施設軒数は22年までの10年間で2.5倍の450軒超に増加。同じ期間に宮古島市の地価(全⽤途)は2倍近い伸びを⽰した。

それでも1平⽅メートル当たりの価格(7⽉時点)でみると、3万8100円と全国平均の4分の1、沖縄県平均でも3分の1強の⽔準にある。県外のホテル事業者は「価格が上がっているとはいえ割安に感じる」と明かす。

県外資本の旺盛な不動産需要を背景に、事業⽤地の不⾜も⽬⽴つ。

「2カ⽉間で5回⽬の訪問だが、事業⽤地が⾒つからない……」。10⽉中旬、宮古島市内の不動産店を訪ねた県外の⾃動⾞関連企業の担当者は焦りを⾒せた。店舗にもネット以上の情報はなく、条件に合う⼟地が出たら連絡をもらう約束だけして⾜早に店を後にした。

地元事業者にとっても⾜かせとなり始めた。宮古島の地下海⽔から製造する「雪塩」を販売するパラダイスプラン(宮古島市)は事業拡⼤を⾒据えるが、⻄⾥⻑治社⻑は「投機的な動きで⼟地の価格がつり上がり、投資しづらい状況にある」と気をもむ。

社員らが住む賃貸物件の不⾜も追い打ちをかける。市街地では空き物件がほぼなく「投資のチャンスが来ているのに住宅不⾜で⼈を集められない」(⻄⾥社⻑)といい、24年以降に社員寮を設ける計画だ。

おきぎん経済研究所(那覇市)によると、22年の宮古島市の賃貸物件の稼働率は99%と⾼い⽔準にある。ホテルの⼯事関係者や島外企業の従業員らの増加が⼀因だ。平均価格は新築の1R〜1LDKで6万3400円。コロナ前の19年を1万円ほど下回り相場が落ち着いてきたもの の、14年⽐では2万円近く⾼い。

飲⾷店開業のため23年に関⻄から移住した30代夫婦の4⼈家族は住居の確保に苦労した。不動産店の物件は新築で⽉23万円か、築40年で6万円の⼆択のみ。いずれも条件が合わず、知⼈から紹介を受けた築⼗数年で6万5000円の物件に⼊居した。

妻は「賃貸相場が⾼く購⼊も検討したが、販売物件も5000万円近い⾼値で⼿を出せなかった。ここまで⾒つからないとは思わなかった」と⽬を丸くした。

宮古島市内の不動産店では、島外客を中⼼に数⼗⼈が賃貸物件の「待機リスト」に並ぶ。連絡を受けた⼊居希望者は即断を求められるため、部屋を内⾒しないまま決める事例が多いという。

アパートを持つ⼤家や投資家など供給側からすれば、有利な状況といえる。沖縄本島在住の経営者は20年に1LDKで20⼾ほどのアパートを建て、今はホテル建設を⼿がける⼤⼿デベロッパーに1棟丸ごと貸借。安定した収益を上げているという。

宮古島に店舗を置く不動産店、たけちゃんほーむ(那覇市)の武島多加雄社⻑は「透明度の⾼い宮古ブルーの海が脚光を浴び、⽯垣島より相対的に開発が進んでいなかった宮古島の成⻑余地への期待から不動産需要が⾼まっている」と指摘している。

宮古島の不動産鑑定⼠「観光需要⾒据えた投資」

⼤島不動産鑑定(⼤阪市)の宮古島⽀社⻑を務める不動産鑑定⼠の半場吉朗⽒に宮古島の不動産事情を巡る背景や現状、今後の⾒通しを聞いた。

――宮古島の不動産市場はコロナ前から上昇局⾯が続いています。

「観光需要は⼀つの⼤きな要因だ。海外有名ホテルブランドなど⼤きな資本が投資先に宮古島を選んでいる。伊良部⼤橋の開通や下地島空港の新ターミナル開業で『ビジネスチャンスがある島』と捉えられ、上昇が顕著になっている」

「コロナ禍でも宮古島の不動産価格は下落しなかった。アフターコロナの観光需要の増加を⾒据えた事業性の投資が⽬⽴っており、さらなる過熱が始まろうとしているタイミングといえる」

――⼀部には⼟地の売却益を⽬的とした投機的な動きもあるようです。

「本⼟の業者に⼟地が買われている実態はあるが、必ずしも投機的な取引だけとは⾔い切れない。実際にホテルが建設されたり事業を始めようとしたりしている例は多い」

「例えばレンタカー事業者数をみると、宮古島は2022年度末に222社で前年度から80社近く増えた。⼀⽅、⽯垣島は11社増の108社にとどまった。レンタカー不⾜と⾔われる中で、より盛んに投資が⾏われたのは宮古島だった」――地元への影響は。

「近年は⼟地の価格が⼤幅に上がり、地主が⼟地を売りに出しやすい状況になっている。とはいえ、本⼟の⼈には割安に映り『ここが買えるなら数百万円の差は気にしない』と成約に⾄るケースが増えている。地主もあえて低い額で売りに出す必要がなくなっている」

「賃貸物件は利便性の⾼い市街地周辺の需要が⾼まって賃料が⾼い⽔準にあり、地元の⼈の住む場所の選択に影響を与えている。特に50平⽅メートルを超えるファミリー向け物件はかねて少なく、新規の着⼯⼾数も少ないため、需要に対して供給が不⾜する状況にある」

――今後の⾒通しは。

「宮古島の空路の観光客数はコロナ前の⽔準を超えている。これから⼤型クルーズ船も段階的に再開し、円安も相まってインバウンド(訪⽇外国⼈客)が増えることを⾒据えると、当⾯は上昇基調が続く可能性が⾼い」

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