2023/10/15 5:00 ⽇本経済新聞   電⼦版

物価⾼圧⼒が強まるなか、⽇銀が今はマイナスとなっている短期の政策⾦利の引き上げを始める可能性が⾼まってきた。注⽬されるのが住宅ローンへの影響。多くの⼈が変動⾦利型を使っており、その⾦利も上がるかもしれないからだ。利上げの開始時期やペース、ローンへの影響をどうみるか

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来年後半、ゼロ⾦利解除も

⽇本では値上げできない、賃上げできないという四半世紀続いた呪縛からようやく解放された感がある。まず新型コロナウイルス禍による供給制約、ウクライナ戦争、そして円安の3 つが重なって物価が上昇。次に働き⼿の減少による⼈⼿不⾜が加わり、賃上げも進んだ。ついに内⽣的な物価上昇のメカニズムが動き始めた。

⾜元の物価上昇圧⼒も⽇銀想定より強まっている。背景には再び円安になりコモディティー価格も底を打ったことがあ る。政府がまとめる経済対策も、需給ギャップがほぼゼロのもとではインフレ促進的だろう。

不確実性はあるものの、⽇銀が⽬標とする2%の物価上昇率が定着する確率が⾼まっている。異次元⾦融緩和の正常化が始まりそうだ。

短期の政策⾦利をマイナスからゼロ%に上げるのは、来年前半だろう。基本は4⽉だ。春季労使交渉の結果をしっかり確認できるからだ。ただ、1⽉の可能性も⾼まってきている。

⽇本経済の実⼒を反映する潜在成⻑率は⽇銀推計でゼロ%台半ば程度。⼤まかにいえば、⾃然利⼦率(緩和的でも引き締め的でもない実質⾦利)は潜在成⻑率を若⼲下回るゼロ%程度とみられ、それに⽬標の物価上昇率2%を上乗せした2%程度が中⽴⾦利(緩和的でも引き締め的でもない名⽬⾦利)になる。

従って、物価⽬標が実現すれば、⽇銀が2%程度まで利上げする可能性もゼロではない。慎重に⾒極めるだろうが、マイナス⾦利解除だけと考えて正常化を始めるわけではないだろう。

例えば半年に1回、利上げしていく可能性を念頭に置き決めるのではないか。1⽉にマイナス⾦利解除なら7⽉にゼロ⾦利解除、4⽉マイナス解除なら10⽉ゼロ解除があり得る。その後は0.25%ずつ上げるイメージを持つのではないか。

マイナス⾦利解除では多くの銀⾏で変動型の住宅ローンの基準⾦利は上がりそうにないが、ゼロ⾦利解除では上がるだろう。すぐに固定型の⾦利より⾼くなる展開はないにしても、変動型ローンの⾦利も⽅向としては上昇していくだろう。

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あり得る緩和への回帰   

今回の物価上昇は、ウクライナ戦争などによる原油⾼や⽶利上げを受けた円安をきっかけに始まった。⽣産年齢⼈⼝の減少を背景とした⼈⼿不⾜も進み、賃上げに結びついた。

ただ、こういうつながりにあまり必然性はなかった。冷静に考えると、原油⾼は再⽣可能エネルギーへのシフトが続いていくと終わる。⽶利上げ・⾦利⾼⽌まりもいつまでも続くはずはないから、円安圧⼒もいずれ後退する。

⼈⼿不⾜による物価⾼も続かない。⼈⼝減少は供給だけでなく消費など需要も減らすはずだし、供給⾯の制約も外国⼈労働者の受け⼊れ積極化や⼈⼯知能(AI)活⽤で緩和されうるからだ。

こうした事情があるだけに、⽇銀は早い段階で異例の政策であるマイナス⾦利の解除だけはやっておきたいのだろう。来年の春季労使交渉での賃上げ動向を重視すると⾔ってきたので年内はないだろうが、来年の早い段階でやりそうだ。メインシナリオは4⽉だが、1⽉や3⽉の可能性も軽視できない。来年は⽶国が利下げを始めそうで円⾼が進む恐れがある。その前に動くという話だろう。

だが、マイナス⾦利だけでなくゼロ⾦利も解除するなど利上げを重ねることに、⽇銀は固執していないだろう。⼀般的には、マイナス⾦利解除までは短期プライムレートが上がらず、

変動型住宅ローンの基準⾦利は上がらないとしても、ゼロ⾦利解除では短プラが上昇し変動ローン⾦利も上がるとみられる。景気に影響が出るので⽇銀は無理できない。ゼロ⾦利解除はない可能性のほうが⾼い。

むしろ、⾦融緩和に逆戻りする展開もあり得る。中⼩企業は毎年賃上げを続ける余⼒はないはずだから、物価上昇率は2025年度以降、2%を割り込む局⾯が来るのではないか。そうなったときは緩和に回帰だ。マイナス⾦利には戻したくないだろうから、国債買い⼊れを増やすなど量的緩和的な⼿法を使うかもしれない。

いずれにせよゼロ⾦利解除まで⾏きそうにない。住宅ローンは変動⾦利型を利⽤しておけばいい。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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