2023/9/19 17:15 (2023/9/19 18:58更新) ⽇本経済新聞  電⼦版

地価回復の波が地⽅に広がってきた。国⼟交通省が19⽇発表した2023年の基準地価は全⽤途の⼟地の上昇割合が全国の44.7%に上り、新型コロナウイルス禍で沈んだ20年から倍増した。国内投資と訪⽇客、再開発の3つが主な要因だ。海外から⼈やカネを呼び込めるかが持続性を占う。

上昇の起点となったのは景気を映しやすい都市部だ。三⼤都市圏で上昇した地点の割合は、新型コロナの影響が出た20年時点の33.5%から23年は80.8%に⾼まった。

住宅需要はなお強い。三⼤都市圏の住宅地の前年⽐上昇率は19年の0.9%から2.2%に拡⼤した。⼤和 ハウス⼯業のマンション事業本部・⾓⽥卓也部⻑は「再開発などで将来の資産性が期待できる物件⾼収⼊層を中⼼に安定的な購⼊が続いている」と明かす。

不動産経済研究所によると、⾸都圏の新築分譲マンションの1⼾当たり平均価格は9940万円で7⽉として過去最⾼だった。1億円に迫る過熱ぶりだ。

沸く「新城下町」

勢いは地⽅にも波及している。象徴的なのが⼤型投資で沸く北海道千歳市だ。

「1年前と⽐べて住宅市場に出回っている物件数は半減した」。北海道の不動産仲介⼤⼿、常⼝アトム(札幌市)の⼤橋⼀弘・千歳⽀店⻑はこう話す。千歳市は2⽉に次世代半導体製造のラピダスの⼯場の建設が決まった。早くも建設関係者などの住宅需要が⾼まる。

同市内の住宅地は全国の上昇率ランキングの上位3位を独占した。伸び率が最も⾼かったのはJR千歳駅近くの地点で、1年間の上昇率は3割を超える。オフィス需要や中⻑期的な⼈⼝増を⾒据え、千歳市は商業地の上昇率でも全国の2〜4位を占める。

半導体受託⽣産の世界最⼤⼿、台湾積体電路製造(TSMC)が⼯場建設を進める熊本県菊陽町周辺も好調だ。住宅地や商業地で20〜30%の上昇が相次ぎ、関連企業の進出によって⼯業地も⾜りなくなっている。

コロナ対応の⽔際措置の緩和で急回復したインバウンド(訪⽇外国⼈)の影響も⼤きい。

インバウンド回帰

⼈気観光地の⾶騨⾼⼭がある岐⾩県⾼⼭市の商業地は前年のマイナス2.4%からプラス2.4%に転じた。

国指定史跡「⾼⼭陣屋」の周辺など観光客が集まる3地点でいずれも上昇し、10%近く上がった地点もあった。

観光客が増えれば、新規投資につながる。JR⾼⼭駅周辺では22年12⽉に⾼級ホテル「メルキュール⾶驒⾼⼭」が開業。24年には星野リゾート(⻑野県軽井沢町)が奥⾶驒温泉郷で温泉旅館を開く。

不動産鑑定⼠の⼩池育⽣⽒は旺盛なホテル需要も背景に「観光地は全⾯的な回復が続く」とみる。

再開発でオフィス需要

再開発が進む地区でも上昇が⽬⽴った。福岡市は商業地が11.2%上昇した。同市はビルの⾼さや容積率の規制を緩和する「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」で建て替えを促す。新たなにぎわいを期待して店舗やオフィスを求める動きを呼び寄せた。

今後の焦点となるのは、コロナ下で地価相場の⼀定の⽀えとなった海外マネーの動向だ。⽇本の低⾦利環境では、ドルを元⼿に円を調達して不動産に投じれば利益を上げやすい。

不動産サービス⼤⼿のジョーンズラングラサール(JLL)によると⽇本の不動産投資額は23年1〜6⽉で2兆1473億円と前年同期から52%と⼤幅に伸びた。海外投資家の購⼊額は⾜元で5130億円ですでに22 年通年の6割に達した。

⼤東雄⼈・リサーチ事業部シニアディレクターは「⽇本は先進国の中でも数少ない不動産の投資リターンが⾒込める市場だ」と分析する。⼀⽅で、世界的な物価⾼騰を受けた各国中央銀⾏の⾦融引き締めによって⾦利が上がり、投資環境は⼀変した。⽇本の超低⾦利がいつまで続くかは⾒通せない。

三井住友トラスト基礎研究所の坂本雅昭・投資調査部⾨⻑は「⽶国の投資家による⽇本の不動産への投資意欲はやや弱まっている」と話す。

中国の不動産不況といった新たなリスクも⽣じている。坂本⽒は「中国の不動産市場が悪化した場合、⽇本市場を⽀えるアジアの投資家の投資姿勢にも影響が出る恐れがある」と指摘する。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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