2023/9/19 5:00   ⽇本経済新聞   電⼦版

50年借りられる住宅ローンが登場している。住宅価格が⾼騰し、毎⽉の返済額を少しでも減らしたいという借り⼿のニーズに応えるため、ネット銀⾏や地⽅銀⾏が取り扱いを始めた。借り⽅の選択肢は増えるが、個⼈も銀⾏も新たなリスクを抱え込んでいるようにみえる。

住信SBIネット銀⾏は8⽉から50年ローンの取り扱いを始めた。広島銀⾏など地⽅銀⾏でも50年ローンの投⼊が⽬⽴つ。若年層の取り込みが狙いだが、完済時の年齢が92歳までの⼈を対象とするローンを扱う地銀もある。

住信SBIの場合、35年を超えるローンを組むと、初年度から借⼊⾦利に0.15%上乗せする。借⼊⾦額は500万〜2億円で、完済時の年齢が80歳未満の⼈が対象だ。住信SBIが指定する団体信⽤⽣命保険への加⼊を条件とする。住信SBIは「⽉々の返済額が減るメリットと、総返済額が増えるデメリットの両⾯を説明して選んでもらっている」と話す。20代や30代からの問い合わせが増えているという。

りそな銀⾏と埼⽟りそな銀⾏は、9⽉から住宅ローンの借⼊上限額を従来の1億円から3億円に引き上げた。「1億円では購⼊資⾦を確保できないケースが出てきた」(りそな銀⾏ライフデザインサポート 部)ため、借り⼿のニーズに対応する。

初の1億円超え

都⼼では1⼾1億円を超える「億ション」が続々と売り出されている。不動産経済研究所(東京・新宿)によると、2023年1〜6⽉の新築分譲マンションの平均価格は東京23区内が前年同期に⽐べ約6割⾼い1 億2962万円だった。平均価格が1億円を超えるのは初めてだ。地⽅都市にも「億ション」はある。

不動産価格は共働きで世帯収⼊の多いパワーカップルですら⼿が出にくい⽔準に上昇した。資材や⼈件費の⾼騰で、今後も価格は⾼⽌まりするとの⾒⽅が多い。50年ローンの提供を始めたり、借り⼊れ上限を引き上げたりする銀⾏が出てきたのは、購⼊資⾦を提供するうえで「必然」だった⾯がある。

個⼈は⻑期にわたって無理なく返済を続けられるかを⾒極めてローンを組む必要がある。東京都⼼の新築マンションは1年で6割も上昇しているのに、賃⾦の伸びははるかに⼩さい点は気がかりだ。

将来の⾦利上昇への備えもいる。新規借り⼊れの約9割は固定型より⾦利⽔準が低い変動⾦利型を選んでいる。年1%を切る低い⾦利で借り、返済期間を⻑期化して⽬先の負担を減らしたいと考える契約者は多い。

変動⾦利型は⾦利が上昇しても5年間は毎⽉の返済額が変わらない「5年ルール」がある。5年経過後の6年⽬からの毎⽉の返済額は、今までの返済額に対して125%の⾦額までしか上げることができないというルールもある。

ただ、返済期間の最終時点で未払い利息と元⾦を全額返済しなければならず、借⾦が減るわけではな い。退職時に残⾦を⼀括して払うとしても、⼗分な⽼後資⾦を確保でできるようにマネープランを練る必要がある。

さらなる低⾦利競争

リスク管理が厳しく問われるのは銀⾏も同じだ。50年ローンは地銀が先⾏して投⼊してきた。

そこに住宅ローンの年間実⾏額が1.4兆円と、4000億〜1兆円程度の3メガバンクを上回る⼤⼿の住信SBIが参⼊した。35年超で⽐較的⾼い⾦利を提⽰してきた地銀と35年以下で低⾦利競争を仕掛けてきた住信SBIのすみ分けが崩れる可能性がある。

「むやみやたらに⾦利競争の世界には⼊っていかない」みずほフィナンシャルグループの⽊原正裕社⻑)と距離を置く銀⾏もあるが、関係者によると「⼤⼿⾏を含めてまだまだ競争が⽌む気配はない」との声が漏れる。

貸出期間が⻑くなればなるほど、失業などで貸し倒れになるリスクが⾼まる。市場⾦利の上昇に伴って、銀⾏がローンの原資を調達するコストも上がる。ニッセイ基礎研究所の福本勇樹⾦融調査室⻑は「これに⾦利の下げ競争が加わるようになると、住宅ローンの採算性が悪化するため、銀⾏の審査やリスク管理がより重要になる」と指摘する。

各銀⾏は⾼額のローンを組めるように審査を緩めているわけではない。現時点で債務不履⾏が⽬⽴っているわけでもない。それでもリスクの芽は出ていないのか。住宅ローン市場で⽣じるひずみやゆがみ は、絶えずチェックしていく必要がある。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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