2024/1/16 14:17 (2024/1/16 16:38更新) ⽇本経済新聞 電⼦版
法制審議会(法相の諮問機関)は16⽇、マンションの建て替えに必要な要件の緩和などを盛った改正区分所有法の要綱案をまとめた。改正法案が成⽴すればおよそ20年ぶりの⼤規模改正となる。築年数を重ねつつあるタワーマンションの⽼朽化にも備える。ポイントをまとめた。
(1)20年ぶり⼤改正の背景は︖
政府は区分所有法の改正案を26⽇召集の通常国会に提出する⾒通しだ。背景にあるのは1970年以降に⼤量供給されたマンションや団地の⽼朽化だ。鉄筋コンクリートのマンションの寿命は60年とされ、30〜40年程度で傷みが⼤きくなる。
国⼟交通省によると、築40年以上の分譲マンションは2042年末には22年末の3.5倍に当たる 445万⼾にまで増加する⾒込みだ。加えてマンションの所有者も⾼齢になっている。1979年以前に完成したマンションの世帯主はおよそ半数が70歳以上だ。相続のタイミングで所有者が不明になったり、空き家になったりする事例が相次ぐ。
現⾏法は所在不明者を集会の決議で反対票と扱う。修繕や建て替えに必要な賛成票を集めにくい課題がある。例えば集会への出席が6割だった場合、残る4割は反対票として扱うため過半数の確保が難しい。
法制審の要綱案は集会の出席者のみによる多数決で決議をできるようにする新制度を盛り込んだ。連絡が付かず所在が分からない所有者を決議の⺟数から除外できる。出席者の意向を反映しやすくする。
管理が⾏き届かない物件は景観や治安の悪化につながり、地域への悪影響が懸念される。最悪の場合、倒壊の危険性も出る。⻑く住みやすいマンションをつくるための法整備を⽬指 す。
(2)タワマン固有の問題とは︖
近年都市部を中⼼に増えているタワマンにも⽼いが迫る。⼀般に20階建て以上の物件を指す。1997年の建築基準法改正を機に都⼼回帰の流れを受けて2000年代に第1次ブームが起きた。東京カンテイによると、全国のタワマンの数は22年末時点で1464棟ある。そのうちおよそ 400棟は03年以前の竣⼯で築20年以上経過した。本格的な修繕などの対応が必要になる。
外壁の簡易な修繕や宅配ボックスの設置といった⼤規模な⼯事を必要としない範囲であれば、集会を開き普通決議で決める。現在は所有者の過半数の賛成が必要だ。
年齢層が様々で所有者の多いタワマンに特有の課題がある。投機⽬的で購⼊した海外居住者や決議に無関⼼な所有者らが集会に参加しない場合がある。合意形成を図りにくく、円滑な⼯事の障壁になる。
新制度で出席者のみによる多数決を認めることで改善する。海外居住者向けに国内に代理⼈を選び、管理に関わりやすくする制度を設ける。
エレベーターの新たな設置といった共⽤部分の変更⼯事や配管の全⾯⼯事も実施しやすくする。ほかの所有者の権利侵害につながるほどに劣化が激しかったり、バリアフリーが⽬的だったりという条件を満たせば3分の2の賛成で可能になる。
(3)⽼朽物件への対策は︖
こうした⾒直しはタワマンだけでなく、すでに⽼朽化に直⾯するマンション・団地にとってより重要だ。
適切な修繕を施していても、いずれは建物として寿命を迎える。基礎からつくり直す建て替え⼯事が必要になる。建て替え⼯事費として所有者に多額の負担が⽣じることもあり合意を取り付けるのは⼀層困難になる。
⾼齢の住⼈やリフォーム⼯事で内装を更新した所有者らは「新たな負担は難しい」「建て替えずに住み続けたい」との意向が強くなりやすい。
現在は建て替え決議に5分の4以上の賛成が必要でハードルが⾼い。建て替えの累計実績は23年3⽉時点でおよそ2万3000⼾にとどまる。
法制審では要件の緩和が議論となった。合意形成を容易にするため3分の2まで⼤幅に要件を引き下げるべきだという意⾒があった。
最終的には①耐震性②防⽕性③外壁➃給排⽔設備⑤バリアフリー――のいずれかに客観的な問題がある場合、所在不明者を除いた4分の3の賛成で可能とする案でまとまった。「所有者の不当な権利侵害につながる」との意⾒などを踏まえた。
建て替え予定のマンションに借り主が居座り続けるケースへの対策も加えた。決議に基づいて6カ⽉後の⽴ち退きを請求できるようにする。
マンションの再⽣にも⼒を⼊れる。先端技術を⽤いたり基礎部分を残したりしたまま建て替える「リノベーション」や建物・敷地の売却は、これまで所有者全員の賛成が必要だった。新制度では条件を満たせば所在不明者を除いた4分の3の賛成で可決できる。
⼤規模災害などで被災したマンションを建て替えたり売却したりする要件も和らげ、早期復興につなげる。
住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。
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