家を買おうと思ったとき、何を基準に住む街を選んだらいいのでしょうか。立地、利便性、はたまた資産性。インターネットで検索すれば、住みたい街ランキング、資産価値ランキングなど多くの情報が出てきます。その多くで語られているのがいわば「スペック」です。
もちろん「スペック」は大切です。しかし街の魅力とは果たしてそれだけで選んでいいものでしょうか。パソコンを例に出してみると、数年前までは「スペック」で選ぶのが当たり前でした。しかし今では、ハードではなくソフト(デザインやOS等)で選ぶ人が増えています。モノからコトへ。まさに街も同じことがいえます。ハードからソフトへ、求められることが変わりつつあるのです。
“僕のロマンチックな映画はすべてニューヨークが舞台。僕は、ニューヨークという都市自体を登場人物の一人だと考えている” ウディ・アレン
資産性や利便性だけが街を語る言葉だとしたら、少し寂しいものです。数字上完璧なスペックの街は果たして本当に魅力的な街なのか。それはそれで疑問です。
そこで今回ご紹介したいのが「センシュアス度」という指標。住みたい街ランキングのような都市計画先行のものではなく、全く逆のアプローチ、人間先行で都市を評価したいという思いから生まれたものです。私達の暮らしの肌感覚に寄り添った指標です。
街の魅力を測るセンシュアス指標とは?
HOME’S総研が2015年、センシュアス・シティ調査を行いました。
センシュアス指標は8つの項目とそれぞれ4つの質問によって構成されます。
① 共同体に帰属している
・お寺や神社にお参りをした
・馴染みの飲み屋で店主や常連客と盛り上がった
・買い物途中で店の人や他の客と会話を楽しんだ
・地域のボランティアやチャリティに参加した
② 匿名性がある
・カフェやバーで一人だけの時間を楽しんだ
・平日の昼間から外で酒を飲んだ
・夜の盛り場でハメを外して遊んだ
・秘密のデートをした
③ ロマンスがある
・デートをした
・ナンパをした、された
・路上でキスした
・素敵な異性に見とれた
④ 機会がある
・刺激的で面白い人達が集まるイベント、パーティに参加した
・ためになるイベントやセミナー、市民講座に参加した
・コンサート、クラブ、演劇、美術館などのイベントで興奮・感動した
・友人、知人のネットワークで仕事を紹介された・紹介した
⑤ 食文化があること
・庶民的な店でうまい料理やお酒を楽しんだ
・地元でとれる食材を使った料理を食べた
・地酒、地ビールなど地元で作られる酒を飲んだ
・ミシュランや食べログの評価の高いレストランで食事した
⑥ 街を感じられること
・街の風景をゆっくり眺めた
・公園や路上で演奏やパフォーマンスしている人を見た
・活気ある街の喧騒を心地よく感じた
・商店街や飲食店から美味しそうな匂いが漂ってきた
⑦ 自然を感じること
・木陰で心地よい風を感じた
・公園や水辺で緑や水に直接触れた
・美しい青空や朝焼け、夕焼けを見た
・空気が美味しくて深呼吸した
⑧ 歩けること
・通りで遊ぶ子どもたちの声を聴いた
・外で思い切り身体を動かして汗をかいた
・家族と手を繋いで歩いた
・遠回り、寄り道していつもは歩かない道を歩いた
千代田区のセンシュアス度は?
千代田区のセンシュアス度を見てみましょう。
千代田区は「共同体に帰属している」では全国4位、「匿名性がある」では全国3位と高得点をつけています。血縁関係や仕事関係といった繋がりだけではなく、自発的な意思による地域や人々との緩やか繋がりがあることが都市の魅力の一つです。
共同体に属することと同じく大切なのが匿名性。住民のほとんどが顔見知りという農村のような関係性では、都市生活者にとっては若干の息苦しさを感じるもの。共同体と相反するようですが、距離を置こうと思えば、自ら交流を遮断できるという自由さも魅力の一つです。
千代田区はは自発的な意思があれば人や地域と繋がりやすく、また自らの意思で人付き合いを遮断しやすいという点で都市ならではの魅力を存分に持っている街だといえます。
一方で「自然を感じる」、「歩ける」という点では千代田区の弱みといえます。
「自然を感じる」という点で千代田区を上回るのが青梅市です。
街にはそれぞれ違った良さがあります。ロマンチックさなどの数値化しづらいものをまとめたのが、今回ご紹介したセンシュアス指標。街選びの際はスペックだけに偏るのではなく、「センシュアスかどうか」という視点で街を選んでみてはいかがでしょうか。
参考:センシュアス・シティ調査 https://www.homes.co.jp/souken/report/201509/
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