2023/12/12付  ⽇本経済新聞  朝刊

⺠間の建設⼯事費⽤が上昇している。建設物価調査会(東京・中央)が11⽇発表した東京地区の11⽉の建築費指数(⼯事原価)は、マンションやオフィスビルなど主要4分野すべてで最⾼を更新した。⽣コンクリートなど資材価格の上昇は⼀服感が出ているものの、⼈⼿不⾜を背景に⼯事現場での労働コストの増加に⻭⽌めがかからない。

建設技術者は不⾜している

同調査会は建屋の組み⽴てや、電気や空調など設備の導⼊、現場作業員の⼈件費などすべての⼯事費⽤を指数化した建築費指数(⼯事原価)を毎⽉算出し、公表している。

11⽉の東京地区の建築費指数(速報値、2015年=100)は、マンション(鉄筋コンクリート造)が前⽉⽐0.2%⾼い126.3と4カ⽉連続で最⾼を更新した。

オフィスビル(鉄⾻造)は0.5%⾼い128.5、⼯場(同)は0.6%⾼い128.2、住宅(⽊造) は0.2%⾼い133.2と、それぞれ最⾼値だった。

マンション、オフィスビル、⼯場はいずれも前年同⽉⽐5%前後上昇している。住宅(⽊造) は2.6%⾼だった。

11⽉の建築費指数の上昇について「⼯事現場の作業員などの⼈件費の増加が指数を押し上げる主要因となった」(同調査会)。

建設資材は、電線・ケーブル関連でメーカーの値上げが浸透したものの、⽣コンなど主要品種は価格の上昇が現状では落ち着いた。⼀⽅で「⼈件費の上昇を起点とした⼯事コストの増加局⾯に本格的に⼊ってきた」(建設業界に詳しいフロンティア・マネジメントの沖野登史彦シニア・アナリスト)との指摘が⽬⽴つ。

建設関連の技術者の⾼齢化が進むなか、労働負荷が重く若者の担い⼿が少ない。⼯事現場の進捗状況を管理する施⼯管理技⼠の派遣業務を⼿がけるウィルグループのウィルオブ・コンストラクション(東京・新宿)によると、「⼈材が⾜りない状況が続いている⼀⽅で建設会社などから引き合いは多く、派遣料⾦は上昇している」と話す。

パーソルキャリアの転職サービス「doda(デューダ)」の登録情報から集計した23年版(22年9⽉〜23年8⽉)の職種別の平均年収では、「⼤⼯・鳶(とび)など」が353万円。前年から9万円(約3%)増えた。

⼈材獲得競争も熾烈(しれつ)だ。リクルートの調査では、7〜9⽉に転職した建設エンジニアで前の職場より給与が10%以上伸びた⼈の割合は34%。前年同期⽐で5.2ポイント上昇した。

建物の基礎を作るための型枠⼯事を⼤⼿ゼネコンから請け負う都内の⼯務店の経営者は「⼯事全体をこなすほどの⼈員がおらず、⼯事の⼀部のみを受けるケースも多い」と話す。

⼤⼿ゼネコンで型枠⼯事にかかるコストは前年同⽉に⽐べ、約2割上がったという。

ここに、建設業界に24年4⽉から時間外労働に上限規制が適⽤される「2024年問題」が待ち受ける。例えば施⼯管理技⼠は複数の現場を担当している場合も多い。残業規制の導⼊で、担当する現場の数を減らさざるを得ない状況も予想される。

ゼネコン側は⼈繰りを考慮しながらの受注にとどめるとともに、既に請け負った⼯事で費⽤の増額を施主と協議する場⾯も増えると⾒られる。新築物件で、マンション価格やオフィス賃料の⼀段の上昇につながる可能性もある。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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