2023/12/12 4:00 ⽇本経済新聞 電⼦版

新築⼀⼾建て住宅の価格は新型コロナ禍後に⼤きく上昇した

新築分譲⼀⼾建ての成約価格は2020年までの約10年間、3500万円前後の横ばい圏で推移してきた。⾸都圏の新築分譲マンションの平均価格が13年の5000万円弱から右肩上がりで上昇を続けてきたのとは対照的だ。

ところが20年以降に2つの事象が起こり、新築分譲⼀⼾建ての価格も上昇局⾯に⼊った。

ウッドショック・資材⾼が直撃

1つは新型コロナ禍だ。新築分譲⼀⼾建ての販売在庫はコロナ禍の直前まで2万⼾近くあったが、21年の夏ごろには7500⼾以下まで減少した。⾃宅で過ごす時間や在宅勤務が多くなり、住んでいた賃貸住宅の遮⾳性能や部屋数に不満を抱いた層が⼀⼾建てを購⼊したことが影響している。当時、家賃並みの⽀払いで⼿が届く価格帯の⼀⼾建てが多かったことも購⼊を後押しした。ただこうした動きは⻑くは続かず、販売在庫は21年の秋頃を底に再び増え始めた。

⼀⽅で2つ⽬の事象として、21年春から「ウッドショック」が勃発した。⽊材価格は約2〜3 倍になり、建築コストが⼀段階上昇した。その後ウッドショックは落ちついたものの、22年からは資源・資材⾼が顕著となった。⽯油関係や鉄などの値上がりの影響で、住宅設備の価格が毎年上昇する局⾯に⼊った。

⾼値に需要ついてこず

こうした需給両⾯の影響で、⾸都圏の新築分譲⼀⼾建ての平均価格は⼀時、20年より2割⾼い約4400万円まで上昇した。ただ住宅ローン審査が通らないなどの理由で需要がついてこず、現在は4000万円前後に下落している。⼟地の仕⼊れ値や建築コストは下がっていないが、⼀部の郊外では値引きなどもして、何とか販売している状況だ。

注⽂住宅についても触れておきたい。国⼟交通省の建築着⼯統計によると、着⼯⼾数は前年同⽉⽐で23カ⽉連続で減少している。10⽉の着⼯数は21年同⽉より3割少なく、今後も厳しい⾒通しだ。22年度のハウスメーカー各社の⼾建て事業も前年⽐マイナスが⽬⽴ち、賃貸事業や新築分譲マンション事業で収益を補っている状況だ。

今後の⼀⼾建ての価格はどうなるか。ウッドショックが落ち着き、現在の⽊材価格はコロナ前の1.3倍程度まで戻ってきている。ただ、現状では元の価格まで下がる⾒通しはない。運搬コストの⾼騰や円安の影響に加え、温暖化による⻑期的な⽊材不⾜の予測もある。最終的には1.2倍程度の価格に落ち着くと⾒込まれている。

建築資材費の⾼騰の影響も⼤きい。⽇本建設業連合会の調べによると、23年10⽉の建築資材の物価指数は21年1⽉と⽐べて28%も上昇。建築費に占める材料費の割合は約6割といわれており、全体に換算すると15%程度のコスト⾼影響が出ている。

さらに労務費の上昇という問題もある。21〜23年3⽉の約2年間で、建設関連の全職種平均で9.1%も上昇した。今後は24年問題も控えており、価格上昇の⼀因となっていく。

新築⼀⼾建て市場はファミリーの実需層が中⼼だ。ファミリーだけでなくシングルやカップル、シニア、投資家と幅広い購買者がいる新築マンションと⽐べて需要層が狭い。⼾建ては4LDKが王道の間取りだが、今後は1LDK、2LDKなどのコンパクトな平屋や、ペット共⽣型の

⼾建て、ラグジュアリーな分譲マンションに近い好⽴地の⾼級仕様など、建て売りの⼀⼾建てでも多様なプランニングが求められると考える。

賃貸、都⼼のシングルタイプが苦戦

ここからは賃貸住宅市場の動向と今後の⾒通しについて論じる。新築分譲⼀⼾建てと同様 に、賃貸市場も建築コスト⾼騰の影響がある。その半⾯、⻑年実現しなかった賃料アップの好機と捉えることもできる局⾯だ。

国⼟交通省の建築着⼯統計を⾒ると、17〜20年は建築不良や不正融資などが社会問題化した影響で賃貸住宅向け融資が厳格化され、低調な着⼯数が続いた。それが21年になると着⼯数が復活し始め、現在は増加傾向にある。

成約数も順調だ。特に⼀都三県や近畿といった都市部では堅調な伸びを⽰している。

賃料も都市部においては上昇傾向だ。SUUMO上で問い合わせの⼊った東京都のファミリータ イプ(3LDK以上)の賃料を20年と23年で⽐較すると15.3%も上昇。都⼼7区(千代⽥、中 央、港、渋⾕、新宿、豊島、⽂京)に⾄っては26.4%も上昇している。ファミリータイプの賃料は神奈川県と千葉県でそれぞれ7.8%、埼⽟県も9.8%と、東京都ほどではないものの上昇している。

カップルタイプ(1LDK〜2LDK)も東京都が6.0%、神奈川県が6.7%、千葉県が7.2%、埼⽟県が6.4%上昇した。シングルタイプ(1R〜1DK)は神奈川県4.7%、千葉県3.8%、埼⽟ 県4.2%の上昇となった。

ところが東京では、都⼼7区と23区のシングルタイプの賃料がほとんど上昇していない。テレワークが普及した影響で、賃料が⾼い都⼼に住む必然性が薄らぎ、都⼼以外を選ぶケースが増えたことが理由として挙げられる。

次に築年数別の傾向を紹介したい。建築コストの⾼騰で、新築は強気の賃料を設定せざるを得ない状況になってきており、全体平均より3割程度⾼く設定されている。そんな中で築5年未満や、築6〜10年の物件の問い合わせが増加している。設備や仕様が最新の物件に近く、新築と⽐較して割安感があるのだろう。

⽝・猫飼育数、⼦供の数を上回る

着⽬すべきトレンドも紹介したい。ペットフード協会によると、22年時点で飼育されているペット(⽝・猫)の飼育数は約1589万頭で、国の⼈⼝動態統計で出ている15歳未満の⼦どもの数(約1450万⼈)を上回っている。20年には出⽣数がペットの新規飼育数を下回る現象も起こった。

このショッキングともいえる状況は、ファミリー向け賃貸物件とペット対応物件のニーズ総数がほぼイコールか、むしろ後者が勝っている状況になっている可能性を⽰している。弊社の「賃貸契約者動向調査(⾸都圏)」によると、賃貸居住者のうちペットを飼っている

⼈の割合は18.2%。今後ペットを飼いたいと考えている⼈の割合が44.5%あることから、賃貸マーケットとしてはペット可、ペットフレンドリー物件に⼤きな伸び代があるといえる。

既存の賃貸住宅をペット可に変更することは、特別なリフォームをせずともできるケースが多い。空室対策と家賃アップの両⽅が狙えるペット対応物件は、今後の賃貸市場で⼤きなポイントとなっていくだろう。

住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。

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