2024/5/15付 日本経済新聞 朝刊


放置空き家が10万戸増えると、日本全体で地価の下落により1.5兆円ほどの経済損失が生じる。解体工事の仲介を手がけるクラッソーネ(名古屋市)の試算は空き家問題に警鐘を鳴らす。川口哲平最高経営責任者(CEO)は「解体を含めてまちを縮小していかなければならない局面にある」と指摘する。

倒壊の恐れがある危険な空き家の撤去が全国で地道に進む。市区町村が解体した空き家は2022年度までの8年間で600戸近くに上る。なかには所有者不明の物件があり、費用の回収が困難なケースもある。

「略式代執行を開始します」。千葉県香取市内で江戸時代の街並みが残る佐原地区。木造2階建ての空き家は屋根や外壁がひどく傷み、草木も伸び放題になっていた。親子が住む店舗併設の住宅だったが、親が亡くなった後、子も行方が分からなくなり20年ほど放置されていた。21年に市が解体に踏み切った。
香取市は自治体が所有者に代わって建物を撤去する代執行が、15年の空き家対策特別措置法の施行後に17件と全国で最も多い。伊藤友則市長は「空き家があると景観も悪くなる」と語る。

総務省が4月に発表した23年10月時点の住宅・土地統計調査によると、使用目的がなく放置された空き家は385万戸で、5年前の調査から36万戸増えた。住宅総数の5.9%を占める。特措法は危険な空き家を「特定空き家」に指定し、自治体が指導や勧告などで改善を促す。従わない場合は最終的に解体もできる。国土交通省によると、22年度までに全国で自治体が解体したのは595戸で、うち所有者不明による略式代執行は415戸に達した。

行政による撤去は空き家対策の最終手段となる。手続きは慎重に進める。福岡市西区のある空き家は近隣住民から相談が寄せられて3年後に代執行で解体した。近年は各自治体で裁判所が選任した管理人が所有者不明の建物を処分できる財産管理制度を活用するケースも増えた。費用や時間がかかるものの、代執行では解体後に費用を回収できない事例が少なくないためだ。

関東学院大学の剣持麻衣准教授は「代執行で危険な空き家を壊しても、土地は行政が自動的に取得できるわけではない。空いた土地の活用が課題として残る」と話す。空き家は放置すればするほど後始末がややこしい。税を通じて事前の対応を迫る動きもある。

京都市は空き家や別荘など非居住住宅への課税を計画する。政府も住宅用地にある固定資産税の減額措置をなくす対象を、従来の倒壊の危険がある特定空き家だけでなく、その前段階の「管理不全」にまで広げる法改正を23年に実施した。

特措法の制定は戸建ての空き家を中心として全国レベルでの対策を後押しした。だが近年はマンションの空き家増加という新たな課題が浮上する。現行法が自治体に与える解体の権限は共同住宅の場合、全室が空室となった物件に限る。政府側の対応が求められる。

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