2024/4/30 19:49 日本経済新聞 電子版
総務省が30日に発表した住宅・土地統計調査はマンションやアパートでも空き家が増えている実態を浮き彫りにした。居住者がいない物件の増加は大規模な修繕や解体に必要な住人の合意形成を難しくする。老朽化する建物が増えるのを見据えて規制緩和などの必要性が高まる。
2023年10月時点を対象とする今回の調査で、全国の空き家899万5200戸のうちマンションやアパートなどの共同住宅は502万3500戸と過半を占めた。全国にある共同住宅の総戸数のうち16.7%が空き家という計算になる。
内訳をみると賃貸用が394万1100戸、売却用は12万9000戸だった。使用目的がなく放置されていたり相続後に誰も住んでいなかったりする共同住宅は84万6800戸だった。18年の調査では77万9600戸で、5年間で8.6%増えた。20年前と比べると1.6倍になった。
マンションで空き家が増えると様々な問題が生じうる。たとえば高齢者が孤独死した後に所有者が分からない事案が起きると、居住者の合意形成が求められる大規模な修繕や建て替えが円滑に進まなくなる可能性がある。
空き家で管理費や修繕積立金などを支払っていないケースではマンションが必要な資金を計画通りに積み立てられなくなる。
マンション空き家問題がここにきて深刻さを増すのは古い建物が増えているためだ。全国でおよそ125万戸ある築40年超のマンションは20年後には3.5倍に膨らむ見通しだ。
老朽化したマンションを放置しておくと周辺へ悪影響を及ぼしかねない。劣化によって鉄筋が露出したり外壁が剥落したりすると周辺の住民や通行人がケガをする恐れがある。
地方自治体は管理状況に関する実態把握を急いでいる。名古屋市は22年からマンションの管理者に対して管理状況の届け出を義務づけた。
購入予定者が管理状況を確認する仕組みもある。神戸市が21年に導入した任意の届け出制度で、管理組合が開示に同意すれば可能となる。横浜市では管理が行き届いていない建物にマンション管理士や建築士ら専門家を派遣する事業を18年に始めた。管理組合の発足や規約の見直しなどにつなげている。
15年に施行された「空き家対策特別措置法」は倒壊する恐れがある危険な空き家を対象に、自治体が指導や勧告をして改善を求めることができる。空き家対策の切り札と位置づけられる。
国土交通省によると、これまでに指導や勧告など措置の対象となったのは4万件。命令に従わなければ、解体する権限もある。マンションを含む共同住宅にも適用できるものの、実績は少ない。同法が想定するのは全部屋が空室となった物件で、一部が空き家になった共同住宅には適用しにくい面がある。
政府は「マンション管理適正化法」を改正し、22年からは自治体が管理不全マンションの所有者に助言や指導、勧告できる仕組みをつくった。それでも「実績は現時点で少数」にとどまると国交省の担当者は話す。所有者の財産権への配慮から勧告よりも重い措置はとりにくく、実効性の確保が課題になっている。
同じマンションに住んでいても居住者の年齢層や世帯構成はバラバラだ。住まいに求める機能や将来像も人によって異なる。政府は合意形成のハードルを下げるために建て替えなどに関する規制緩和や管理組合の機能強化といった方策を進めている。
住宅購入で無理のない資金計画を立てる事は、将来の暮らしを変えるポイントとなるので、わからない事などあった際には、是非ご相談ください。
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